本記事では、発達障害とてんかんという2つの診断を併せ持つ場合に、学校・仕事・日常生活のそれぞれの場面でどのような点に注意すればいいのか、そして周囲との情報共有や生活リズムづくりなど日常で取り入れやすい工夫について、現在知られている一般的な考え方をもとにわかりやすく整理します。
1.なぜ「発達障害+てんかん」は誤解されやすいのか
発達障害(神経発達症)とてんかんは、診断名としては別々に扱われますが、どちらも脳のネットワークや電気的活動のあり方と関連すると考えられています。
そのため、発達特性やてんかん発作の特徴によっては、一方の症状が目立ち、もう一方が見過ごされてしまうこともあります。
現場では、例えば次のような誤解や困りごとが見られることがあります。
– 「てんかん」と聞くと、ドラマのイメージから「突然倒れる発作」だけを思い浮かべてしまう
– 集中力や判断力に波があり、「やる気がない」「怠けている」と受け取られてしまう
– 薬の副作用による眠気やだるさなのか、発達特性や疲労によるものなのか区別が難しい
– 学校や職場に診断名や配慮を伝えづらく、ひとりで抱え込んでしまう
こうした誤解や情報不足が続くと、ご本人が「自分の努力不足だ」と感じ、ストレスや自信の低下につながることもあります。 まずは、発達障害とてんかんの両方について、本人・家族・周囲の人が基本的な理解を共有することが、支援の出発点になります。
2.あなたや家族は、ひとりではありません
発達障害とてんかんの両方の診断を受けた方やご家族からは、「自分たちは少数派なのでは」「理解してもらえないのでは」といった不安の声を聞くことがあります。
しかし、小児てんかんの領域では、発達障害との併存が一定の割合で報告されており、決して珍しい組み合わせではありません。
神経発達症は、「脳の働き方や反応の仕方に多様性がある」と言い換えることもできます。 脳のネットワークの結びつき方や、電気的な活動の特徴が一般的なパターンと少し異なるために、集中の仕方、刺激への反応、予定の変更への対応などに独特の傾向が現れることがあります。
こうした特性があると、周囲の理解や環境の工夫があれば、強みとして生かせる場面もあれば、支援が必要になる場面もあります。 「特別だから大変」というよりも、「自分に合ったペースやスタイルを探す必要がある」ととらえ、医療・福祉・教育などの専門家と一緒に考えていくことが大切です。
3.診断を受けたときに押さえたい3つの視点
発達障害とてんかんの両方を抱える場合、「病気をなくすこと」だけに焦点を当てるのではなく、「どう暮らしやすい環境を整えるか」という視点が重要になります。 ここでは、一般的に重要とされる3つのポイントを挙げます。
① 正確な診断と継続的な治療・服薬管理
てんかんは、発作のタイプや原因によって適切な薬や治療が異なります。 発作がしばらく起きていない場合でも、自己判断で薬を減量・中止すると、再発のリスクが高まることがあります。
– 主治医の指示に従って、定期的に受診する
– 必要に応じて脳波検査などを行い、発作のコントロール状況を確認する
– 飲み忘れや副作用について、不安があれば早めに相談する
また、発達特性に応じて、心理社会的支援(心理療法、ソーシャルスキルトレーニング、環境調整など)が役立つ場合もあります。 薬だけでなく、周囲の環境や支援体制も含めて治療・支援を考えていくことがポイントです。
② 周囲との情報共有と安全確保
学校や職場など、日常生活の多くの時間を過ごす場で、必要な情報を適切に共有することは、安全と安心の両方につながります。
診断名を伝えるかどうかは、ご本人と家族の希望や状況によって異なりますが、「誰にも伝えない」場合には、発作や体調不良が起きたときの対応が遅れたり、誤解されやすくなったりすることもあります。
信頼できる範囲の人から少しずつ情報を共有し、「どんな時に助けが必要で、どんな配慮があると力を発揮しやすいか」を一緒に考えてもらうことが現実的な方法です。
③ 生活リズムとストレスのマネジメント
てんかんでは、睡眠不足・過度の疲労・心理的ストレスなどが発作の誘因となることが知られています。発達障害の特性上、予定変更や感覚刺激などのストレスがたまりやすい場合もあり、生活リズムとストレス管理はより重要なテーマになります。
– 十分な睡眠時間を確保し、就寝・起床時刻をできるだけ一定に保つ
– 過度な残業や、連日のハードな活動が続かないよう、スケジュールを調整する
– 休日には「何もしない時間」や、安心して過ごせる場所・活動を意識的に作る
– どのような場面でストレスを感じやすいかを振り返り、事前に対処法を考えておく
ご本人だけでなく、家族や周囲の人も一緒に生活リズムの工夫を考えることで、発作リスクを下げ、日々の負担感を軽減しやすくなります。
4.診断は「終わり」ではなく「理解の入口」
発達障害とてんかんの診断は、「制限」を意味するだけのものではありません。 自分の特性や体の反応の傾向が言葉になったことで、「なぜ今までうまくいかなかったのか」「どんな工夫があれば過ごしやすくなるのか」を整理しやすくなる側面もあります。
誰にでも、得意なこと・苦手なこと、疲れやすい場面があります。
発達障害とてんかんの診断は、その特徴を理解し、自分のペースで生活や学び、仕事を組み立てていくための手がかりのひとつと考えることができます。
不安なときは、ひとりで抱え込まず、主治医や相談機関、支援者と一緒に「今できること」を一つずつ確認していくことが大切です。
当院は、精神科として多くの患者様の診断と治療に携わってきました。てんかん専門医としても認定を受けており、安心してご相談いただけます。
※公開/更新日: 2026年4月16日 13:37

