-
記憶が飛ぶ症状が現れたら要注意!考えられる病気と受診のタイミング
精神科コラム
《2025年3月19日16:42 公開》
-
この記事では、記憶が飛ぶ症状が現れた時に考えられる病気、特に注意すべき点や病院を受診するタイミングについて、専門医の視点からわかりやすく解説します。また、適切な治療法についても触れていきます。
1.記憶が飛ぶとは?
記憶が飛ぶとは、ある時間帯の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっている状態のことです。一時的に意識がなくなる場合や、出来事の一部が思い出せない場合など、様々なケースがあります。日常生活で以下のような経験がある場合は、注意が必要です。
・気が付くと、今どこにいるのか、何をしていたのかが分からなくなる
・会話中に、話していた内容を忘れてしまう
・過去の出来事を思い出せない
・日常生活で、何度も同じことを繰り返してしまう
・時間感覚が曖昧になる
これらの症状は、単なる疲れやストレスによるものと安易に考えず、症状が頻繁に起こる、または日常生活に支障をきたす場合は、専門的なサポートが必要となります。
2.記憶が飛ぶ時に考えられる病気
記憶が飛ぶ症状が現れる時に考えられる主な病気は、以下の通りです。
- てんかん
てんかんは、脳の神経細胞の異常な興奮によって、発作が繰り返し起こる病気です。 発作の種類によっては、意識を失ったり、記憶が飛んだりすることがあります。てんかんの診断と治療方針決定には脳波検査を行い、治療には、抗てんかん薬が用いられます。
- 認知症
認知症は、脳の神経細胞が減少し、認知機能が低下する病気です。記憶障害が主な症状ですが、時間や場所の感覚が曖昧になったり、出来事を忘れたりすることもあります。
アルツハイマー型認知症では検査技術の発展により、より関連する領域の萎縮の有無をスコアという値で評価できるようになりました。また、脳の血流の低下部分を検査できるSPECT検査では、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症では血流低下部位の違いが見られることが知られています。このように複数の検査により、認知症の種類が判明し、治療や対策が行われます。
- 解離性障害
解離性障害は、強いストレスやトラウマ体験によって、意識や記憶、自己認識などが分離してしまう病気です。記憶喪失や、自分が自分でないような感覚(離人感)が現れることがあります。解離性障害は、精神的なケアが重要となります。
- 一過性全健忘
一過性全健忘とは、突然記憶が抜け落ちる一時的な記憶障害です。例えば、朝の出来事や今いる場所が思い出せなくなる一方で、言葉を話すなど日常生活の動作は問題なく行えます。多くは数時間で回復し、後遺症も残りませんが、原因ははっきりしておらず、ストレスや過労が関与する可能性も指摘されています。MRIやCT検査でも異常が見つからないことが多く、再発のリスクもあるため、繰り返す場合は専門医を受診することが大切です。
- その他の病気
記憶が飛ぶ原因には、一過性全健忘以外にもさまざまな病気が関係している可能性があります。例えば、脳腫瘍ができると脳の圧迫によって記憶を司る部分に影響を与え、物忘れや記憶障害が現れることがあります。また脳卒中によって脳の血流が遮断されると、記憶に関わる領域がダメージを受け、一部の記憶を失うこともあります。さらに、低血糖では脳へのエネルギー供給が不足し、一時的に意識がもうろうとする、直前の出来事を思い出せなくなることがあります。
また、薬物中毒による脳への影響も記憶障害を引き起こす原因の一つです。例えば、過剰なアルコール摂取は短期記憶に影響を与え、「ブラックアウト」と呼ばれる記憶の欠落を引き起こすことがあります。さらに、睡眠障害が続くと脳が十分に休息を取れず、集中力や記憶力が低下し、まるで記憶が飛んでしまったように感じることもあります。
このような症状が続く場合は、単なる疲労や加齢のせいと考えず、早めに専門医を受診することが大切です。
3.病院に行くべきかどうかの判断基準
では、どのような場合に病院に行くべきなのでしょうか?以下の項目を参考に、ご自身の状態をチェックしてみてください。
・頻度と持続時間
□記憶が飛ぶ症状が頻繁に起こる
□症状が数分以上続く、または繰り返し起こる
□日常生活に支障が出るほどの頻度で起こる
・症状の内容
□完全に記憶が抜け落ちている
□意識を失うことがある
□過去の出来事を思い出せない
□時間や場所が分からなくなる
□けいれんや体の震えを伴う
・その他
□頭痛や吐き気、めまいなどを伴う
□持病がある、または薬を服用している
□原因が分からない
□自分で対処できない
上記の項目に複数当てはまる場合、早めに専門医への相談を検討することをおすすめします。
記憶が飛ぶ症状は、決して一人で抱え込むべき問題ではありません。まずは気軽に精神科・心療内科に相談してみてください。
-
-
気分の波が激しい時に考えられる病気:双極性障害や適応障害のサイン
精神科コラム
《2025年3月14日16:00 公開》
-
この記事では、気分の波が激しい時に考えられる病気、特に双極性障害(躁うつ病)や適応障害の可能性について、専門医の視点からわかりやすく解説します。また、病院を受診する際のポイントや治療法についても触れていきます。
1.気分の波とは?
気分の波とは、気分が一定ではなく、変動する状態のことです。誰でも多少の気分の変化はありますが、その変動幅が大きく、日常生活に支障をきたす場合は、注意が必要です。気分の波は、以下のように現れることがあります。
⑴気分の高揚(躁状態)
・気分が異常に高ぶる、爽快な気分になる
・活動的になり、じっとしていられない
・睡眠時間が短くなっても平気
・考えが次々と浮かび、止まらない
・浪費やギャンブルなど、衝動的な行動に出る
⑵気分の落ち込み(うつ状態)
・気分がひどく落ち込む、憂鬱な気分が続く
・何もする気が起きない、疲れやすい
・睡眠障害(不眠または過眠)
・食欲不振または過食
・集中力や判断力の低下
・自分を責める、死にたいと思う
これらの症状が、単なる気分のムラではなく、日常生活や社会生活に支障をきたすレベルである場合、専門的なサポートを受けたほうが賢明です。
2.気分の波が激しい時に考えられる病気
気分の波が激しい時に考えられる主な病気は、以下の通りです。
⑴双極性障害(躁うつ病)
双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。以前は躁うつ病と呼ばれていました。躁状態では、気分が高揚し、活動的になりますが、その反動でうつ状態に陥ることがあります。気分の波が激しく、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
⑵適応障害
適応障害は、ストレスの原因となる出来事や環境の変化に対応できず、心身の不調が現れる病気です。気分の落ち込みや不安、イライラなどが主な症状ですが、気分の波として現れることもあります。ストレスの原因がなくなれば、症状は改善することが多いです。職場や家庭でのストレスが原因となることがあります。
⑶うつ病
うつ病は、気分の落ち込みが2週間以上続く状態です。気分の落ち込みが中心的な症状ですが、気分の波として現れることもあります。うつ状態を引き起こす原因には体の病気もありますが、体の病気がないのにうつ状態が現れる病気をうつ病と呼びます。
⑷その他の心の病気
その他にも、境界性パーソナリティ障害、月経前症候群(PMS)など、気分の波を伴う病気があります。これらの病気も、専門医による適切な診断と治療が必要です。
3.病院に行くべきかどうかの判断基準
以下の項目を参考に、ご自身の状態をチェックしてみてください。
⑴日常生活への影響度
□気分の波によって、仕事や学校、プライベートな活動に支障が出ている
□気分の変動が激しく、周囲の人との関係がうまくいかない
□日常生活で常に不安や緊張を感じている
□症状が長期間(数ヶ月以上)続いている
⑵症状の程度
□症状が強く、日常生活に大きな苦痛を感じている
□躁状態やうつ状態が交互に現れる
□症状が改善しない、または悪化している
□睡眠障害や食欲不振など、身体症状が強く出ている
⑶自己対処の限界
□自分で色々試してみたが、症状が改善しない
□症状をコントロールすることが難しいと感じる
□一人で悩みを抱え込んでいる
上記の項目に複数当てはまる場合、専門医への相談を検討することをおすすめします。
4.精神科・心療内科を受診するメリット
精神科や心療内科を受診することは、多くの方にとってはハードルが高いと思われがちですが、さまざまなメリットが得られますので、早めの受診をご検討ください。
・医師による正確な診断を受けられる
気分の浮き沈みや精神的な不調の原因はさまざまであり、自己判断が難しい場合もあります。専門医は、丁寧な聞き取りを通じて、うつ病や双極性障害、適応障害などの可能性を慎重に検討し、的確な診断を下します。これにより、症状に合った適切な治療方針を立てることができます。
・治療の選択肢が豊富である
薬物療法では、気分安定薬や抗うつ薬などを用いて、症状を緩和することができます。また、心理療法として認知行動療法などを取り入れることで、考え方や行動パターンを見直し、症状の改善を目指します。さらに、生活習慣の見直しやストレス管理の方法についてのアドバイスを受けることもできるため、総合的なケアが可能になります。
専門医と悩みを共有することで、精神的な安心感を得られるのも大きなメリットです。心の不調を抱えていると、一人で悩みがちですが、専門家に話を聞いてもらうことで気持ちが軽くなり、孤独感が和らぐこともあります。
精神科や心療内科は、単に治療を受ける場所ではなく、心の負担を軽減し、より健やかな生活を送るためのサポートを受ける場でもあります。
-
-
あがり症の症状が強い時、病院に行くべきでしょうか?
精神科コラム
《2025年3月5日13:00 公開》
-
この記事では、あがり症の症状、病院に行くべきかどうかの判断基準について書いていきます。
「人前で話すとき、心臓がドキドキして頭が真っ白になる…」
もしあなたがそう感じているなら、それは「あがり症」かもしれません。あがり症は、社会不安障害の一種であり、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。
1.あがり症について
「人前で話すときや注目を浴びる場面で、強い不安や緊張を感じる状態」です。具体的には、以下のような症状が現れることがあります。
⑴精神的な症状
・強い不安や恐怖を感じる
・頭が真っ白になる
・考えがまとまらない
・失敗することへの強い恐れ
・人からどう見られているか過剰に気にする
⑵身体的な症状
・動悸、息切れ
・発汗
・手の震え、身体の震え
・赤面
・吐き気、腹痛
・声が震える、声が出なくなる
これらの症状は、単なる緊張ではなく、日常生活や社会生活に支障をきたすレベルである場合、専門的なサポートを受けたほうが良い状態です。
2.あがり症と社会不安障害
あがり症は、社会不安障害(社交不安障害)の一つの症状として捉えられることがあります。
社会不安障害とは、他人から注目される対人的・社交的な場面で強い不安や緊張を感じ、赤面、震え、息苦しさなどの身体症状が出る病気です。社会不安障害の人は、恥をかくことを恐れ、そのような社会的状況を避けようとする傾向があります(社会不安障害は、近年治療可能な病気であることがわかってきており、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます)。
3.病院に行くべきかどうかの判断基準
以下の項目を参考に、ご自身の状態をチェックしてみてください。
⑴日常生活への影響度
□あがり症の症状のために、仕事や学校、プライベートな活動に支障が出ている
□人前に出ることを極力避けている
□日常生活で常に不安を感じている
□症状が長期間(数ヶ月以上)続いている
⑵症状の程度
□症状が強く、日常生活に大きな苦痛を感じている
□症状が改善しない、または悪化している
□動悸や吐き気など、身体症状が強く出ている
⑶自己対処の限界
□自分で色々試してみたが、症状が改善しない
□症状をコントロールすることが難しいと感じる
□一人で悩みを抱え込んでいる
上記の項目に複数当てはまる場合、専門医への相談を検討することをおすすめします。
4.精神科・心療内科を受診するメリット
専門医を受診することで、以下のメリットが期待できます。
・正確な診断
医師は、あなたの症状を詳しく聞き取り、あがり症だけでなく、他の心の病気(うつ病、パニック障害など)との鑑別診断を行います。
・適切な治療法の提案
①薬物療法:症状を緩和する薬(抗不安薬など)が有効な場合があります。
②心理療法:認知行動療法など、考え方や行動パターンを変えることで症状を改善する治療法があります。
③その他の治療法:必要に応じて、リラクゼーション法、呼吸法などの指導も受けられます。
・継続的なサポート
症状の経過を観察し、治療効果や副作用をチェックしながら、あなたに合った治療法を継続的に提供してくれます。
・安心感
専門家と悩みを共有することで、精神的な安心感が得られ、孤独感を解消できます。
5.治療の選択肢
あがり症の治療法は、症状の程度や個人の状況によって異なります。一般的な治療法を紹介します。
・薬物療法:SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、抗不安薬などの薬を服用することで、不安や緊張を和らげることができます。
・認知行動療法:不安を生じさせる考え方や行動パターンを修正する治療法です。
・リラクゼーション法:深呼吸や瞑想などにより、心身の緊張を和らげる方法です。
・暴露療法:あがり症の原因となる場面に少しずつ慣れていく治療法です。
これらの治療法を組み合わせることで、より効果的な改善が期待できます。
あがり症は、決して一人で抱え込むべき問題ではありません。専門家のサポートを受けることで、症状を改善し、より快適な生活を送りましょう。
-