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精神科で病名を教えてくれない理由とメリット・デメリットについて
精神科コラム
《2023年3月31日16:33 公開》
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精神科で病名を教えてくれない理由と、そのメリット・デメリットについての記事です。
まず、精神科において他の内科や外科のように検査結果や画像診断のように客観的に症状を知ることは困難です。精神科では目に見えない、気分や心を扱っていますので、診断を下すことや病名の告知にはリスクもあり慎重になります。
例えば、早期の診断により別の疾患を見逃すなど誤診の可能性があります。また、同じ鬱病であっても症状は個人差があり、治療方針も異なります。
患者さんに必要なことは、病名の告知以前に、最適な治療と回復ですが、同時に、患者のプライバシー保護が背景にあります。
精神疾患に対する社会的な汚名や負のイメージから、社会的な差別や偏見にさらされる可能性があります。患者にとって大きな負担となりますので、病名を明かすことは適切でない場合があります。その一方で、病名を明かさなくても、専門家の治療や支援を受けることはできます。
また、初見での診断が難しい場合もあります。CT検査のように数値や画像で症状を判断できませんし、過去の症状や病歴、成育環境など患者さんの記憶に頼らざるを得ない部分が多くあります。現在の症状はあくまで経過の一時点にすぎず、病名が変わる可能性があるということです。
一方、デメリットとしては、患者さんが不安を感じる場合、今後の治療に支障をきたす可能性が考えられます。精神疾患は、身体的な病気と異なり、その症状が誤解や偏見を受けることが多く、病名を知らないことで、不安や心配が増すことが考えられます。
人はわからないものに対して不安になります。そこで、インターネットなどを用いて情報を集めようとすると、誤った方向に思い込みをしてしまう危険があります。
また、病名を告知しないことにより、医師と患者の信頼関係が損なわれる可能性もあります。
患者さんが病名を知らないまま治療を受けていると、患者は不信感を募らせることがあります。病名を聞いても明確な説明もなく告知がないと、治療に対しての前向きになれず、治療効果が低下することが考えられます。
そこで、以下をご参考ください。
・主治医に相談する
主治医に病名告知をしない理由を直接聞いてみましょう。
例えば、後から出てきた症状等により病名が変わる可能性や患者さんが病名を受け止める準備が出来たと判断した場合に告知予定だと告げられることもあります。
また、治療法や副作用、治療期間などの情報をより具体的に提供してもらうことができます。
・処方箋の作用を知る
症状や病名ではなく、処方されている薬の作用を医師や薬剤師に聞いてみることも大切です。患者さんの状態によっては、病名を受け止められない場合も考えられますので、まずは、適切な治療が上手く行き、日常生活し支障がないことを目指すことも大切です。
精神科の病名は、社会的な影響だけでなく、個人的な影響も考慮しなければなりません。精神疾患を抱える人には、自分の病名を知ることが自己認識の一助となり、治療に積極的に取り組むことができる人もいますが、その一方で、病名によって自己評価が低下したり、社会的な立場に悪影響を与えたりすることがあります。
医師は上記に考慮し、病名を教えるかどうかを適切に判断しなければなりません。患者との信頼関係を築き、必要な情報を提供することで、より効果的な治療を行うことができるからです。
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精神科と心療内科の違いについて
精神科コラム
《2023年3月25日10:39 公開》
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「精神科」と「心療内科」は、精神や心の疾患を専門に治療する医療分野ですが、その違いがいくつかあります、その違いについて説明いたします。
精神科は、精神疾患(精神障害)に特化した医療分野です。精神科医は、精神病、発達障害、不安障害、うつ病、パニック障害などの精神疾患の治療に専門的な知識とスキルを有し、診断から治療まで一貫して行うことが多く、最善のアプローチをすることができます。
精神科で診療する主な疾患には次のようなものがあります。
・精神病: 統合失調症など。
・発達障害: 自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害など。
・不安障害: パニック障害、恐怖症、社会不安障害、全般性不安障害など。
・気分障害: うつ病、双極性障害、気分変調性障害など。
・依存症: アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症など。
・睡眠障害: 不眠症、過眠症、むずむず脚症候群、レム睡眠行動障害など。
これらは一例であり、精神科で診療する疾患はこれに限られません。
世界的な基準にはDSMという診断分類の基準があり、22のカテゴリ―に分かれており、さらに細かく分類されています。似たような症状も多く、専門医として患者さんの症状に応じて適切な診断と治療を行います。
次に心療内科ですが、心身症、すなわち環境や心の状態が原因で発症・増悪する身体疾患(胃潰瘍、アトピー性皮膚炎など)の治療が専門です。心療内科医は、ストレスや生活習慣、生理学的な問題などが原因で生じる身体疾患の専門的知識と診断・治療のスキルを持っています。
また、生活習慣病、内分泌障害などの身体的な問題から生じる精神的な問題を扱うことがあります。
これらの精神的な問題は、適切な治療を受けないと進行し、より深刻な問題になることもあります。そのため、早期に身体の症状を認識し適切な治療を受けることと並行して精神的な治療も行うことが大切です。
アプローチが精神か身体かの違いはありますが、精神科と心療内科は、健康な身体と精神をとりもどし、社会生活や日常生活に支障がない状態を目的としています。
精神科と心療内科の違いをご紹介しましたが、心を扱う科目は他にもあります。
神経科、メンタルヘルス科、心の診療科、こころのクリニックなどです(ただしこれらの表記の医療機関の医師の多くは精神科医です)。
心の病を引き起こす原因は非常に複雑で、それにかかわる脳の構造も複雑です。
そのため複数の専門医が連携していくことになるのですが、正直どこに行けばよいのか分かりにくいと思います。
まずはお近くにある病院やクリニックへご相談されるか、保健所や自治体の医療相談窓口などでご相談されるのがよいでしょう。
心の不調や精神疾患の疑いがある場合は早めに専門医へ相談し、適切な治療を開始することをお勧めします。
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季節の変わり目と精神疾患について
精神科コラム
《2023年3月21日10:33 公開》
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季節の変わり目は、多くの人にとって不安やストレスを引き起こすことが知られています。これは、寒暖差、冷暖房による室内外の温度差、短い日照時間、天候の不安定さ、花粉症、季節性のホルモンの変化、自律神経の乱れ、生活環境の変化などが原因と考えられます。
具体的には以下の項目です。
・光線:日照時間が短くなり、天候が曇りや雨などになることがあります。このため、必要なホルモンの産生が減少し、抑うつ症状や不安障害が引き起こされることがあります。
・体内時計の乱れ:体内時計の乱れを引き起こすことがあります。これにより、睡眠の質や生活リズムが乱れることが原因で、抑うつ症状や不安障害が引き起こされることがあります。
・ストレス:人々にとってストレスを感じやすい状態にあります。これは、天候の変化や生活リズムの変化などが原因で、不安障害やパニック障害などが引き起こされることがあります。
上記以外に、個人によって異なる要因が関係しますので、正確な原因を特定し最適な治療法につなげることが大切です。
特に、秋と冬には季節鬱病(SAD)と呼ばれる精神疾患が発症することがあります。
SADは、季節性の気分障害であり、秋から冬にかけて持続する抑うつ症状、低い気分、エネルギー不足、食欲の変化、抑うつなどが特徴です。
治療には、光療法が有効と考えられます。これは、特別な模様の光を使って、体内のホルモンのバランスを改善することを目的とした療法です。また、適度な運動や睡眠、健康的な食生活、ストレスの軽減なども重要です。
予防には、十分な日光を浴びる、適度な運動、ストレスを軽減するためにリラックスする時間を作ることなどが効果的です。
また、他の精神疾患も季節の変化によって加速することがあります。
例えば、パニック障害、や不安障害などがこれに該当します。
・パニック障害は、突然起こる激しい不安やパニック発作を特徴とする不安障害の1種疾患です。
・不安障害は、常に不安や心配、緊張感を伴っている状態を特徴とする疾患です。
治療には、個々人の状況に応じて薬物療法や精神療法、グループセラピーなどが使われ、長期的な取り組みが必要です。
病気の有無にかかわらず、季節の変わり目に体調を整えるために気を付けたいポイントを紹介します。
・正常な生活リズムの維持:生活リズムが乱れやすいため、できるだけ早起き・早寝を心がけましょう。また、適度な運動やバランスのとれた食事も大切です。
・光療法:光を浴びる時間が少なくなるため、できるだけ外で散歩や適度な運動をすることや、日光ランプを使って光を補うことが有効です。
・ストレス対策:散歩や軽いストレッチなどのリラックス法、またはカウンセリングなど人に話を聴いてもらうことも有効です。
・睡眠の質の向上:就寝前(1時間半くらい前)にぬるめのお湯に入浴、ホットミルク、睡眠時間の確保、部屋の雰囲気を落ち着かせる、スマホ等は触らない、サプリや睡眠薬などの使用も有効です。
心の不調や精神疾患の疑いがある場合は早めに専門医へ相談し、適切な治療を開始することをお勧めします。
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精神疾患の疑いがある方のご家族が相談する場合
精神科コラム
《2023年3月14日10:28 公開》
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ご家族がうつ病や心身症のような症状が見られた場合、精神科への受診が思い浮かぶと思います。
家族が勧めても、「自分は病気じゃない」と受診を拒否し、症状も改善されない場合、
お近くの「保健所」または「精神保健福祉センター」への相談をお勧めします。
精神科を受診し精神疾患と診断されると、自立支援医療や精神障害者保健福祉手帳など、様々な行政サービスを受けることが出来ます。
保健所は主に、心の健康や社会復帰に関しての相談などを行っています。窓口だけでなく訪問指導もあります。
相談する際のポイントを紹介します。
・精神疾患の疑われる当人の現状を具体的に伝える
生活状況(一日どのように過ごしているか、食事やアルコール、入浴や運動…)
既往歴(発症の時期、現状、治療の有無…)
生育歴(幼少期、親子関係、問題行動…)
・家族が困っている事を具体的に伝える
本人が妄想や幻覚を訴える、1日おきにしか食事をしない
毎日何らかの暴言や暴力があり困っている、受診を嫌がり外に出ない
・具体的に意思を伝える
精神科を受診させ適切な治療をしたい、病院を紹介してほしい
自宅訪問して本人と話してほしい
・緊急性の高い問題を伝える
本人の自傷の恐れ、暴力がひどく一緒に暮らせない…
※一度の相談ですべてが解決するものではありません
医療機関に通院するようになっても治療期間は年単位でかかることも珍しくありません。
行政へ相談の結果、本人が精神科を受診となれば、医療機関とご家族で連携して治療を進めます。
薬物治療や認知行動療法など様々ですが、日常生活の中でご家族の協力と観察は重要です。本人が気持ちや症状を表現できない場合、ご家族にヒアリングすることもあります。
その際、具体的にお答えいただけると、医師とのコミュニケーションもスムーズです。
行政機関への相談も選択肢のひとつとしてご検討ください。
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