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やる気がでない、ずっと寝ていたい…その裏に潜む病気の可能性
精神科コラム
《2025年2月21日10:00 公開》
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「最近、どうもやる気が起きない」「一日中寝ていたい」と感じることはありませんか?これらの症状は、一時的な疲れやストレスによるものかもしれませんが、もしかすると、何らかの病気が潜んでいるサインかもしれません。これらの症状の背景にある病気の可能性と、どのように対処すべきかについて書いていきます。
1.やる気が出ない、寝てばかりいる状態とは
具体的にはこれらの症状は、以下のような特徴を持ちます。
・意欲の低下: 何をするにも億劫で、何もしたくないと感じる
・疲労感: 常に疲れているように感じ、体がだるい
・睡眠時間の増加: 必要以上に長く寝てしまう、または、寝ても疲れが取れない
・活動性の低下: 外出を避ける、人と会うのが億劫になる
・集中力の低: 仕事や勉強に集中できない
・気分の落ち込み: 憂鬱な気分が続く、または、理由もなく悲しくなる
これらの症状が長期間続く場合、単なる疲れやストレスと捉えずに、専門医に相談することが大切です。
2.やる気が出ない、寝てばかりいる状態の背景にある可能性
これらの症状の背景には、様々な要因が考えられます。精神科・心療内科で考慮すべき主な病気には、以下のようなものがあります。
・うつ病: 気分の落ち込み、意欲の低下、不眠または過眠が主な症状です。うつ病は、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで発症すると考えられています。
・双極性障害(躁うつ病): 気分の波が激しく、うつ状態と躁状態を繰り返す病気です。躁状態では、気分が高揚し、活動的になりますが、うつ状態では、意欲が低下し、寝てばかりいることがあります。
・睡眠障害: 不眠症だけでなく、過眠症も、やる気の低下や日中の眠気を引き起こす可能性があります。睡眠の質が悪いと、体が十分に休まらず、疲労感が残るからです。
・適応障害: ストレスの原因となる出来事に対して、過剰な反応を示す状態です。ストレスが原因で、意欲が低下し、寝てばかりいることがあります。
・発達障害: 発達障害を持つ方の中には、特定の状況下で意欲が低下したり、疲れやすさを感じたりする方がいます。また、睡眠リズムが乱れやすい傾向もあります。
・身体疾患: 甲状腺機能の異常や貧血など、身体の病気が原因で、意欲低下や疲労感が生じることがあります。特に、鉄欠乏性貧血は、だるさや疲労感を引き起こすことがあります。
3.精神科・心療内科でのアプローチ
精神科や心療内科では、患者様の症状を詳しくお伺いし、原因を特定するための検査を行います。具体的には、以下のようなアプローチで診療を進めます。
・問診: 症状の内容、発症時期、生活習慣、家族歴などを詳しくお伺いします。
・心理検査: 必要に応じて、心理状態を評価するための検査を行います。
・血液検査: 甲状腺機能や貧血の有無などを調べます。
・脳波検査: てんかんの可能性を調べるために実施することがあります。
・その他の検査: 必要に応じて、MRIやSPECT(脳の血流を画像化する検査)などの画像検査を行います。
これらの検査結果を総合的に判断し、適切な診断と治療を開始します。
4.治療法
治療法は、原因によって異なりますが、主に以下の方法があります。
・薬物療法: 抗うつ薬、気分安定薬、睡眠導入剤などを用います。薬物療法は、症状の緩和や再発予防に有効です。
・精神療法: カウンセリングを通じて、ストレスの原因を特定し、対処法を学びます。
・生活習慣の改善: 規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけることが大切で。環境調整: 職場や家庭環境でのストレスを軽減するように調整します。
・光療法: 睡眠障害や季節性うつ病に有効な場合があります。
5.自分でできる対策
症状を緩和するために、ご自身でできる対策をいくつかご紹介します。
・規則正しい生活: 毎日同じ時間に寝起きし、規則正しい食事を心がける
・適度な運動: 軽い運動をすることで、心身のリフレッシュになる
・リラックス: 音楽を聴いたり、入浴したりして、リラックスする時間を作る
・睡眠環境の整備: 寝室を暗く静かにし、快適な睡眠環境を整える
・カフェインやアルコールを控える: 就寝前のカフェインやアルコール摂取は避ける
6.放置するとどうなるのか
これらの症状を放置すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、さらに深刻な状態に陥る可能もあります。例えば、うつ病が悪化すると、自殺のリスクが高まることもあります。また、睡眠障害が慢性化すると、心身の健康に悪影響を及ぼします。その症状の奥に心身の病が潜んでいることもあり、早めに精神科や心療内科などの専門医に相談してください。
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夜になると脚がむずむずして眠れない…その原因について
精神科コラム
《2025年2月12日10:00 公開》
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「夜になると脚がむずむずして眠れない」「脚の中に虫が這っているような不快感がある」といった経験はありませんか?これらの症状は、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)と呼ばれ、睡眠不足を引き起こし、日中の活動にも影響を及ぼす可能性があります。
1.むずむず脚症候群とは
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)は、脚に不快な感覚が生じ、じっとしていられない、動かしたいという衝動に駆られる病気です。特に夕方から夜間にかけて症状が現れやすく、睡眠を妨げる大きな要因となります。この不快感は、「むずむずする」「じりじりする」「虫が這うようだ」などと表現され、人によって感じ方が異なります。
- むずむず脚症候群の症状
むずむず脚症候群の主な症状は以下の通りです。
・脚の不快感: 脚の奥の方に、むずむずする、じりじりする、虫が這うような感覚が生じる
・動かしたい衝動: 不快感を和らげるために、脚を動かしたくなる
・症状の悪化: 夕方から夜間にかけて症状が悪化する
・睡眠障害: 脚の不快感で入眠困難になったり、夜中に目が覚めたりする
・症状の軽減: 脚を動かしたり、歩いたりすると一時的に症状が和らぐ
これらの症状は、日常生活に大きな影響を与え、特に睡眠不足は、日中の眠気、集中力低下、倦怠感、気分の落ち込みなどを引き起こす可能性があります。
- むずむず脚症候群の原因
むずむず脚症候群の原因は、完全に解明されているわけではありませんが、以下の要因が関与していると考えられています。
・鉄欠乏性貧血: 鉄分不足は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンの生成に影響を与え、むずむず脚症候群を引き起こす可能性があります。
・神経伝達物質の異常: ドーパミンの機能異常が、症状の発症に関与していると考えられています。
・遺伝的要因: 家族にむずむず脚症候群の人がいる場合、発症リスクが高くなる可能性があると考えられます。
・慢性疾患: 腎不全、糖尿病、パーキンソン病などの慢性疾患が、むずむず脚症候群を引き起こすことがあります。
・妊娠: 妊娠中は、ホルモンバランスの変化や鉄分不足が原因で、症状が現れることがあります。
・特定の薬: 抗うつ薬や抗精神病薬など、特定の薬の副作用として、むずむず脚症候群が起こることがあります。
2.精神科・心療内科の重要性
精神科や心療内科を受診される方の中には、むずむず脚症候群を抱えている方が少なくありません。うつ病や不安障害などの精神疾患を抱えている場合、むずむず脚症候群の症状がさらに悪化することもあります。また、睡眠障害を伴う場合、精神的な不調を招く可能性もあります。
- むずむず脚症候群の治療法
むずむず脚症候群の治療法は、原因や症状の程度によって異なりますが、主に以下の方法があります。
・鉄分の補給: 鉄欠乏性貧血が原因の場合は、鉄剤の服用や食事療法で鉄分を補給します。
・薬物療法: ドーパミン作動薬や抗てんかん薬などの薬を服用することで、症状を緩和します。
・生活習慣の改善: 規則正しい生活、カフェインやアルコールの摂取を控える、適度な運動、就寝前のリラックスなどを心がけることが大切です。
・非薬物療法: マッサージ、温冷浴、ストレッチなども効果的です。
- 自分でできる対策
むずむず脚症候群の症状を緩和するために、自宅でできる対策をいくつか紹介します。
・就寝前のストレッチ: 脚の筋肉をほぐすストレッチを行う
・マッサージ: 脚を優しくマッサージする
・温冷: 脚を温めたり冷やしたりする
・カフェインやアルコールの摂取を控える: 就寝前にカフェインやアルコールを摂取しない
・規則正しい生活: 毎日同じ時間に寝起きする
・リラックス: 就寝前にリラックスできる環境を作る
3.放置するとどうなるのか?
むずむず脚症候群を放置すると、慢性的な睡眠不足につながり、様々な問題が生じる可能性があります。具体的には、日中の眠気や倦怠感、集中力や記憶力の低下、気分の落ち込みや不安などが現れる可能性があります。これらの症状は、日常生活の質を著しく低下させるだけでなく、既存の精神疾患を悪化させる可能性も指摘されています 。
明らかな外傷や原因がはっきりしている場合は別ですが、「脚の奥の方に、むずむずする、じりじりする、虫が這うような感覚が生じる」といった脚の不快感が続くようであれば、精神科や心療内科を受診されることをおすすめします。
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認知症と発達障害の見分け方!高齢者の症状に悩むあなたへ
精神科コラム
《2025年2月3日10:00 公開》
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年齢を重ねると、多くの人は認知機能が低下するものです。また、怒りっぽくなるなど性格の変化が出てくる方も多く、周囲の人はその言動に悩まされることがあります。その背景には認知症だけでなく、大人の発達障害が関与している可能性も考えられるのです。
ここでは、認知症と発達障害の違いについて、書いていきます。
1.認知症とは
認知症とは、脳の器質的な病変によって、記憶力、判断力、理解力といった認知機能が持続的に低下する状態を指します。これは、加齢による変化とは異なり、日常生活に支障をきたすほどの影響があります。認知症にはいくつかの種類があり、最も多いのはアルツハイマー型認知症で、脳の萎縮が主な原因で、初期には記憶障害が前景に立ちます。同じく脳の萎縮が原因のレビー小体型認知症では幻視やパーキンソン症状が見られ、血管性認知症は脳血管障害によって引き起こされ、梗塞部位に関連した症状が見られます。
2.発達障害とは
発達障害は、生まれつきの脳機能の発達の偏りによって、社会生活や学習に困難が生じる状態です。これは、病気というよりも個人の特性と捉えることができます。
発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。これらの症状は幼少期から見られることが多く、個人差が大きいのが特徴です。また、環境の変化やストレスによって症状が変動することもあります。
2004年に発達障害支援法がスタートし、注目されましたが、徐々に大人の発達障害についても認知されるようになりました。例えば、「単純なミスを繰り返す」、「職場によく遅刻する」、「人間関係がうまくいかないことが多い」など社会生活上問題を抱えている場合に気が付くことが多いようです。
3.高齢期における認知症と発達障害の鑑別
現在、発達障害は子供だけの問題ではありません。ある程度高齢になって発達障害の症状が問題となった場合、誤って認知症と診断されることがあります。認知症と発達障害は、発症時期、原因、症状の特徴が異なります。
認知症は主に高齢期に発症し、徐々に進行する病気です。原因は脳の器質的な変化、例えば脳の萎縮や血管障害などが挙げられます。認知症の主な症状は、記憶力の低下であり、日常生活に支障をきたすほど影響が大きくなります。コミュニケーション能力も低下し、意思疎通が困難になることも多くなります。
一方、発達障害は生まれつきの脳機能の偏りによって生じます。症状は幼少期から見られることが多いですが、大人になってから初めて表面化することもあります。病気というよりも個人の特性と捉えられます。認知症ほど記憶力の低下は見られませんが、不注意の特性により忘れ物や失くしものが多い、コミュニケーションに特有の困難さが見られることがあります。
認知症と発達障害を鑑別する際の重要なポイントは以下の通りです。
・主な発症時期: 認知症は高齢期に発症、発達障害は幼少期から
・原因: 認知症は脳の器質的病変、発達障害は脳機能の偏り
・記憶力: 認知症では顕著な低下、発達障害では比較的保たれる(不注意による物忘れ)
・コミュニケーション: 認知症では意思疎通困難、発達障害では特有の困難さ(空気が読めない、相手の意図がわからないなど)
このように、認知症と発達障害は異なる特徴を持っています。
4.専門医による診断と検査
認知症や発達障害が疑われる場合は、専門医による正確な診断が不可欠です。診断には、問診、認知機能検査、心理検査、脳画像検査、血液検査、脳波検査などが行われます。
- 検査
脳画像検査: MRIやSPECT検査を用いて脳の状態を詳しく調べます。
MRI検査:脳の萎縮具合や梗塞の有無などを画像で確認します。
SPECT検査:脳の血流分布を画像化して、脳の血流が低下している部位や度合いを調べる検査です。 この検査は、てんかんの診断にも有効です。
血液検査: 血液検査は、主に血液一般検査(赤血球、白血球、血小板等の数を見る)、生化学検査 (肝機能、腎機能、高脂血症や糖尿病等の検査、各種ホルモンの値の検査等)や服用している 薬物の血中濃度検査等を行います。甲状腺機能や貧血の有無を調べ、うつ状態の鑑別にも役立 ちます。また、ムズムズ足症候群の原因となる鉄欠乏性貧血を特定することもあります。
脳波検査: 脳波は、脳の機能を評価する生理検査です。てんかんの診断と治療方針の決定に不可欠な 検査 です。高齢発症てんかんは、しばしば認知症と間違えられることがあります。
- 治療とケア
認知症の治療には、薬物療法(抗認知症薬など)や非薬物療法(リハビリテーションなど)があります。発達障害の治療には、環境調整、ソーシャルスキルトレーニング、認知行動療法、薬物療法などがあります。
・薬物療法: 認知症では症状の進行を遅らせるための抗認知症薬や脳梗塞を予防するための投薬が行われます。BPSD(心理社会的症状)の緩和のために、向精神薬(抗うつ薬、抗不安薬、抗てんかん薬)や漢方薬が必要に応じて使用されます。発達症では不注意の特性を改善するための薬剤や随伴する精神症状の緩和のために同じく向精神薬が用いられます。
・心理療法: 認知行動療法やソーシャルスキルトレーニングなど、個々の状態に応じた心理療法を行います。いずれの場合も環境調整は重要です。
・生活習慣の改善: バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、生活習慣の改善も重要です。
認知症と発達障害は異なる病態ですが、どちらも早期発見と適切な対応が重要です。
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