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認知症外来を精神科で―経験豊富な専門家がお手伝い
精神科コラム
《2023年6月29日14:46 公開》
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精神科における認知症外来についてのコラムです。
精神科の認知症外来とは、認知症の診断や治療を行う外来診療です。認知症は、加齢に伴って起こる脳の機能障害によって引き起こされる病気で、記憶力や判断力、注意力などの認知機能の低下が特徴です。認知症には、アルツハイマー病やレビー小体型認知症、脳血管性認知症など、さまざまな種類があります。
精神科の認知症外来では、患者さんの認知機能の状態を検査し、認知症の種類や原因を診断します。その後、認知症の進行を遅らせたり、症状を改善したりするための治療を行います。治療には、薬物療法やリハビリテーション、生活習慣の改善などがあります。
精神科の認知症外来を受診するメリット
- 精神科専門医による診察を受けることができます
- 治療に必要な薬物療法やリハビリテーション施設への紹介を受けることができます
- 患者さんやそのご家族へのサポートを受けることができます
- 認知症に症状が似た精神疾患を見分けることが可能になります
- 早期発見・早期治療につながります
精神科の認知症外来を受診する際の注意点
- 定期的に受診して下さい
- 医師の指示に従って治療を受けて下さい
- 薬を含めた病院の治療だけに頼らず、生活習慣を改善する努力をしましょう
- 患者さんの病状や治療方針について、ご家族とよく話し合いましょう
- 受診前に、患者さんの病状や治療方針について、ご家族とよく話し合いましょう
- 患者さん単独ではなく、付き添いと共に受診することをお勧めします
認知症の方は、病状の進行により、記憶力や判断力が低下し、病院での受診や診察を理解することが難しくなることがあります。そのため、付き添いの方が、病状や受診の目的を医師に伝える、診察の際に本人のサポートをすることが重要です。
付き添いには、家族や友人、介護者など、本人の普段の様子をよく知っている人が適しています。付き添いの際には、本人の病状や受診の目的を医師に伝え、診察の際に本人のサポートをしてください。また、付き添いの方が、病院の受付や診察の流れを把握しておくと、スムーズに受診することができます。
認知症の外来受診は、本人にとっても付き添いの方にとって、負担のかかることかもしれません。しかし、早期発見・早期治療が大切であるため、付き添いの方には、本人のサポートをしながら、受診を促してください。
最近物忘れが多くなった、性格が変わってきた、何に対してもやる気が出ないなど自覚症状がある場合、認知症に非常によく似た症状が出てくる精神疾患もあります。
症状の初期の時点で適切な治療を開始すれば、その後の日常生活が穏やかに過ごせるでしょう。一人で悩まず、まずは専門家へお気軽にご相談ください。
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精神科で処方する認知症治療薬:症状緩和と生活の質向上をサポート
精神科コラム
《2023年6月16日14:42 公開》
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精神科で処方する認知症治療薬についてのコラムです。
認知症は、高齢者にとって深刻な問題であり、家族や介護者にも大きな負担をかける疾患です。この記事では、認知症の定義と治療の必要性について説明し、さらに精神科専門医の視点から、認知症治療における薬物療法について解説します。
認知症の定義と症状
認知症は、脳の機能の低下によって引き起こされる病気であり、記憶力や思考力、判断力などに障害が生じる状態を指します。原因は、アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、さまざまなものがあります。
一般的な認知症の症状
認知症にはさまざまな症状がありますが、以下はその代表的な症状です。
- 記憶障害: 認知症患者は、新しい情報を覚えることや過去の出来事を思い出すことが困難になる事があります。
- 認知機能の低下: 認知症患者は、集中力や問題解決能力が低下し、複雑な課題への対応が困難になることがあります。
- 言語障害: 認知症患者は、適切な言葉の選択や文章の構成が困難になる場合があります。
- 空間認識障害: 日常生活での道迷いや物の配置の混乱が見られることがあります。
- 行動・情動の変化: 認知症患者は、無気力や興味喪失、抑うつ状態、不安感、興奮状態、攻撃的な行動などの情動の変化が起こることがあります。
- 日常生活の困難: 認知症患者は、食事の準備、入浴、着替え、家事などの日常生活の動作に支援が必要になることがあります。
認知症治療の必要性
認知症は、治癒する病気ではありませんが、早期に治療することで症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させることができます。認知症の治療には、薬物療法、非薬物療法などがあります。
また、患者さん本人だけでなく、家族や介護者にも大きな負担がかかります。治療には、患者さん本人と家族や介護者が協力して行うことが大切です。
認知症治療における薬物療法
薬物療法は、認知症の行動・心理症状の改善や進行の遅延を目的とした治療法の一つです。認知症の中核症状を劇的に改善する治療はありませんが、精神科専門医が適切な薬物を処方することで、認知症の行動・心理症状を改善することが可能です。
主に、抗認知症薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬などが使用されます。
・抗認知症薬: 認知症に関連する神経化学的な変化に対抗する働きがあり、認知症の進行を遅らせる効果があるとされています。
・ 抗精神病薬:認知症の行動・心理症状を緩和するために使用される薬です。主にドーパミン受容体拮抗剤と呼ばれる薬が使われます。幻覚や妄想、錯覚などの症状を抑える効果があります。
・抗不安薬: 不安や緊張を和らげるために使用される薬です。神経系の活動を抑制することで鎮静やリラックス効果をもたらします。
・睡眠薬: 睡眠の質を改善するために使用される薬です。睡眠障害や不眠症の治療に使用されます。さまざまな種類の睡眠薬が存在します。これらの薬は、睡眠の導入や維持を助けるために使用されます。
ただし、これらの薬は医師の処方箋が必要であり、個々の状況や症状に合わせて適切な薬が選ばれるべきです。また、副作用や注意事項も存在するため、専門家の指導のもとで使用することが重要です。
精神科専門医が、患者さんの個別のニーズや病状を的確に把握し、薬物療法の適切な選択と管理を行います。また、薬物治療だけでなく、認知療法やリハビリテーションといった非薬物療法も積極的に取り入れ、患者さんの生活の質の向上をサポートします。
認知症は高齢者にとって深刻な問題であり、家族や介護者にも大きな負担をかける疾患です。
とよだクリニックでは、精神科専門医・認知症学会専門医が患者さんや家族の方々に対して十分な情報提供とサポートを行っています。認知症の理解や治療法についての疑問や不安に対して、丁寧な説明とコミュニケーションを心掛けています。加えて、患者さんと家族の方々が安心して治療に取り組むことができるよう真摯に取り組んでいます。
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精神科において行う認知症検査
精神科コラム
《2023年6月10日14:38 公開》
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早期発見と的確な診断のために、精神科において行う認知症検査についてのコラムです。
認知症は、認知機能の低下を特徴とする病気であり、単に個人の問題とは言い切れない社会全体の問題といえます。平均寿命が延び、高齢者の認知症患者は増加傾向にあります。また、65歳未満で発症する若年性認知症は、男性に多い傾向にあります。
認知症は早期に発見し、適切な治療やケアを行うことが何より重要です。本記事では、精神科専門医による認知症検査の重要性と手法について詳しくご説明します。
認知症の特徴と症状
認知症は、記憶力や判断力、言語理解などの認知機能の低下が特徴です。例えば、初期段階では、日常生活での小さなミスや物忘れが増えることがあります。また、予定の記憶が曖昧になったり、鍵や財布の置き場所を忘れたりすることがあります。さらに進行すると、時間や場所の混乱が生じ、迷子になる、身近な人の顔や名前が思い出せなくなるなど、日常生活において大きな問題が生じます。
認知症検査の目的と利点
認知症検査の主な目的は、患者さんの認知機能を評価し、早期にの認知症の兆候を発見することです。
具体例としては、患者さんが自分の予定や医師の指示を正確に覚えているかどうかを評価することが挙げられます。また、患者さんの記憶力、注意力、計算力、言語能力、判断力などを評価するテストも行われます。
認知症の特徴や症状は個人によって異なりますが、早期の発見と適切な対応がその後の治療や日常生活に大きく影響します。
検査結果に基づいて適切な治療やケアを行うことで、認知症の進行を遅らせることができます。また適切なサポートを提供することで、患者さんの健康と生活の質を向上させることもできます。
認知症検査は、認知症の診断を下すための唯一の方法ではありませんが、早期発見に役立つ重要なツールです。認知症の兆候が気になる方は、早めに医師に相談することをお勧めします。
主要な認知症検査手法の紹介
一般的によく使用される認知症検査手法には「長谷川式認知症スケール」と「MMSE」があります。
「長谷川式認知症スケール」は、
精神科医の長谷川和夫先生によって開発された認知機能検査です。医師が効率的かつ公平に認知機能の低下を診断するために1974年に開発され、1991年に一部改定されました。
この検査は30点満点で、20点以下だった場合、認知症の疑いが高いと言われますが、診断結果はあくまでも参考です。このテストの点数が悪かったからといって、「認知症」と診断されるものではありません。気になる場合は、病院に行って検査・診断をおすすめします。
長谷川式認知症スケールは、9つの評価項目から構成されています。
例えば、
– 年齢はいくつですか?
– 今日は何年ですか?何月ですか?何日ですか?何曜日ですか?
– 私たちが今いるところはどこですか?
– これから言う3つの言葉を言ってみてください。①桜、猫、電車または②梅、犬、自動車。後でまた聞きますのでよく覚えておいてください。
– 100から7を順番に引いてください。それからまた7を引くと?
このように、長谷川式認知症スケールは、認知機能の低下が認められるか判定するために行う検査になります。
「MMSE検査」
認知症が疑われるときに行われる神経心理検査のひとつです。1975年にアメリカで誕生し、国際的に用いられている検査で、2006年に日本語版が完成しました。
この検査は、認知機能の低下を点数で客観的に計測することができる、世界各国で用いられている検査方法です。短時間で簡潔に行える検査で、低下している認知機能の種類や低下度合いを客観的に確認できます。ただし、あくまでもスクリーニング検査なので、MMSEの結果だけで認知症の診断はできません。
認知症の診断は、上記の検査だけでなく、MRI・CTによる脳検査、本人や家族からの聞き取り、鑑別診断なども行った上で総合的に判断します
最後に
認知症は早期の発見と適切な対応が重要です。精神科専門医による認知症検査は、その第一歩となります。
物忘れが増えたり、仕事でミスが多くなったり、何かしら日常生活に支障があるときは、お早めにご相談下さい。
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