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やる気がない・寝てばかりの高校生 単なるサボりではない心の病気
精神科コラム
《2026年3月16日9:38 公開》
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この記事では、高校生の無気力や過眠の背景に、どのような心身の不調が隠れていることがあるのか、そして保護者としてどのように関わればよいかを解説します。ここで述べる内容は一般的な情報であり、特定の治療や効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師などの専門家にご相談ください。
1.「怠けている」で片付けてしまわないために
「最近学校に行きたがらない」「休みの日はほとんど寝ていて、声をかけても反応が薄い」。高校生のお子さんを持つ保護者の方から、こうした相談が寄せられることは珍しくありません。周囲からは「やる気がないだけ」「怠けている」と見られやすい状態ですが、その背景に心やからだの不調が隠れていることもあります。
朝起きられない、授業中に居眠りしてしまう、休日はほとんどベッドから動けない、といった様子が続くと、保護者としてはつい「甘えているのでは」「スマホやゲームのせいでは」と考えてしまいがちです。しかし、睡眠や気分、体のだるさなどにかかわる不調があると、本人の努力だけではどうにもならない状態になることがあります。
そのような時に「もっと頑張りなさい」「気合が足りない」と叱責を続けると、本人は自分を責めやすくなり、気分の落ち込みや自己否定が強まってしまうことがあります。生活全体に影響が広がるケースもあるため、早い段階での気付きと相談が重要です。
2.高校生の無気力や過眠の背景にある主な心身の不調
高校生の「やる気が出ない」「寝てばかりいる」といった状態の背景には、さまざまな要因が関係している可能性があります。
– 気分や意欲の低下
以前楽しめていたことが楽しく感じられない、些細なことでイライラしやすい、集中力が続かない、食欲が落ちているなどの変化がみられることがあります。「自分なんて価値がない」「いなくなってしまいたい」といった否定的な考えが頭から離れない場合は、早めの相談が特に重要です。
– 朝起きづらさや立ちくらみを伴う状態
朝になると強いだるさや頭痛、めまい、立ちくらみなどが出やすく、午後になるといくらか動きやすくなるといったパターンもあります。周囲からは「夜更かしのせい」と誤解されやすい一方で、自律神経のバランスの乱れなどが影響していることもあります。
– 強い疲労感が続く状態
十分に寝たはずなのに疲れが取れない、軽い活動でも極端に疲れてしまう、といった状態が長く続くこともあります。だるさに加えて、筋肉や関節の痛み、集中力や記憶力の低下を訴えることもあります。
– 睡眠リズムや発達特性に関連する状態
過眠傾向を伴う睡眠の障害や、発達特性に関連したストレスから、二次的に気分の落ち込みが強くなることもあります。学校や家庭で「頑張りが足りない」と見られ続けると、本人は自信を失いやすくなります。
これらはあくまで一般的な例であり、実際には複数の要因が重なっていることも少なくありません。
3.個別のケースから見える回復のプロセス
たとえば、高校生活の途中から朝起きられなくなり、遅刻や欠席が増えた生徒がいたとします。周囲から「怠けている」と受け取られ、本人も「自分はダメだ」と感じるようになっていたケースでは、医療機関を受診した結果、気分の落ち込みと自律神経の不調が重なっていることが分かる場合があります。
そのようなケースでは、医師による診察・説明のもとで、薬によるサポートや生活リズムを整える工夫、考え方のクセに気付くための心理的支援などが組み合わされることがあります。学校とも相談しながら負担を調整し、少しずつ午前中の登校ができるようになり、時間をかけて部活動や友人関係へと活動の幅が戻っていく例もあります。
大切なのは「怠けている」と決めつけるのではなく、「何か困っていることがあるのかもしれない」と視点を切り替えることです。
4.保護者ができる具体的なサポート
保護者としてまず意識したいのは、お子さんの状態を一方的に評価するのではなく、話を聴く姿勢です。
– 「どうしてできないの?」ではなく、「最近どんなことがつらい?」と尋ねる
– 「怠けている」と責めるのではなく、「困っていることがあれば一緒に考えたい」と伝える
– できていること、頑張れていることにも目を向けて言葉にする
こうした関わりは、本人が「話してもいいかもしれない」と感じるきっかけになります。
つらい状態が2週間以上続く、学校生活や家庭生活に明らかな支障が出ている、自分を傷つけるような言動が見られる、といった場合には、医療機関や相談窓口への受診・相談を検討してください。受診の際には、
– いつ頃からどんな様子が続いているか
– どの時間帯やどんな場面でつらさが強いか
– 睡眠・食事・友人関係・学校の様子の変化
といった情報を整理して伝えると、専門家が状況を把握しやすくなります。
あわせて、学校との連携も重要です。担任やスクールカウンセラー、養護教諭などに現状を共有し、課題や出席の扱いなどについて相談することで、本人の負担を減らす工夫ができる場合があります。家庭では、規則正しい生活リズムを目指しつつも、無理やり起こしたり、厳しく叱りつけたりする対応は避けましょう。朝日を浴びる、軽い散歩を取り入れる、食事のリズムを整えるなど、できる範囲でサポートしていく姿勢が大切です。
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物忘れだけじゃない 高齢者のてんかんと認知症を脳波でチェック
精神科コラム
《2026年3月9日9:35 公開》
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本記事では、高齢者のてんかんと認知症の違い、そして脳波検査がなぜ重要と考えられているのかについて、医学的知見に基づいてわかりやすく解説します。高齢のご本人やご家族が「認知症かもしれない」と感じたときに、見落とされやすいてんかんの可能性についても整理します。
1.なぜ高齢者のてんかんは見逃されやすいのか
高齢者のてんかんが認知症と誤診されやすい最大の理由は、症状の出方が典型的な「けいれん発作」とは大きく異なることです。多くの人は「てんかん=全身が激しくけいれんする病気」というイメージを持っていますが、高齢者のてんかんでは、目立つけいれんを伴わず、意識がぼんやりする、反応がなくなるといった症状だけが出ることが少なくありません。
見逃されやすい症状
高齢者のてんかんでは、次のような一見ささいに見える症状がみられます。
– 数分間、急にぼんやりして呼びかけに反応しない。
– 口をもぐもぐさせる、服をいじるなど同じ動作を繰り返す。
– 会話の途中で突然黙り込み、その間の記憶が残っていない。
これらは認知症の症状と非常によく似ているため、「加齢による物忘れ」「認知症が進んできた」と判断されてしまうことがあります。また、発作のあとにもうろう状態が数時間から数日続くこともあり、その間の様子だけを見ると「認知機能が急に落ちた」と受け取られてしまうこともあります。
2.認知症とてんかんの深刻な関係
近年の研究から、認知症とてんかんは互いに関連し合うことが示されています。認知症のある人では、そうでない人に比べててんかんを起こしやすいことが知られており、高齢になって初めててんかんを発症した人の中には、のちに認知症が明らかになる例も報告されています。
一方で、てんかんのある人では、将来認知症を発症する頻度が高くなるというデータもあり、てんかんの発症から認知症が現れるまでの期間が短くなるという報告もあります。つまり、認知症とてんかんは相互にリスクを高める関係にあり、片方の病気が疑われる場合には、もう一方の可能性も意識することが重要です。
アルツハイマー病とてんかんの関連
アルツハイマー型認知症では、ごく早期から脳内でてんかん性の異常な電気活動が起きていることがあり、そのような異常が認知機能の低下を早める一因になると考えられています。認知症症状が出始めたアルツハイマー病の患者さんに脳波検査を行うと、その一部でてんかん性の異常波が見つかることがあると報告されています。
3.脳波検査が鍵を握る理由
てんかんの診断において、脳波検査は非常に重要な検査のひとつです。脳波検査では、頭皮上から脳の電気活動を記録し、てんかんに特徴的な波形(棘波や鋭波など)が出ていないかを確認します。臨床的にてんかんが疑われる症状があり、脳波検査で典型的な異常が確認されれば、てんかんと診断できる可能性が高くなります。
一方、認知症の診断では、病歴や問診、認知機能検査、画像検査などを組み合わせて判断することが多く、脳波検査が必須でない場合もあります。したがって、脳波検査を組み合わせることで、「認知症だけなのか」「てんかんを合併しているのか」を見分ける手がかりになることがあります。
高齢者てんかんにおける脳波検査の課題
ただし、高齢者のてんかんでは、1回の脳波検査だけで異常波をとらえられないことも少なくありません。1回目の検査で異常が見つからなくても、てんかんではないと断定することはできないため、必要に応じて検査を繰り返したり、睡眠時の脳波を追加で記録したりすることが検討されます。症状の頻度や性質によっては、長時間のビデオ脳波モニタリングを行い、実際の発作と脳波の変化を同時に観察する方法が用いられることもあります。
4.高齢者てんかんと認知症の見分け方のポイント
高齢者のてんかんと認知症には、いくつかの特徴的な違いがあります。
– 状態の良い時と悪い時の差:てんかんでは、普段はほぼいつも通り過ごせるものの、発作のときだけ急に様子が変わります。認知症では、日による揺れはあっても、全体としては同様の症状が続きやすい傾向があります。
– 記憶障害のパターン:てんかんでは、発作の前後など特定の時間帯だけ記憶が抜け落ちることがあります。認知症では、徐々に新しいことを覚えられなくなり、全体として記憶障害が進行していきます。
– 症状の持続時間:てんかん発作そのものは数分程度と比較的短く、似たような症状が繰り返し起こることが特徴です。
症状記録の重要性
高齢者のてんかんは診断が難しく、診察室だけでは判断がつかないことも多いため、日常生活での様子を記録しておくことが大きな助けになります。どのような症状が、いつ、どのくらいの時間続いたのか、発作の前後で意識や行動がどう変化したのかをメモしておき、診察時に医師に伝えることで、より正確な診断につながります。動画で様子を記録できる場合には、それも有用な情報になります。
正確な診断のために
てんかんの診断には、脳波検査だけでなく、頭部MRIなどの画像検査、詳しい問診や家族からの情報提供が不可欠です。特に高齢になって初めててんかんが疑われる場合には、その背景に脳血管障害や変性疾患などが隠れていないかを確認するため、画像検査を行うことが一般的です。脳萎縮や小さな脳梗塞、白質の変化など、加齢とともに増える脳の変化が、てんかん発症の一因となる場合もあります。
「年齢のせい」「認知症だから仕方ない」と決めつけてしまう前に、てんかんの可能性も含めて総合的に評価してもらうことが大切です。気になる症状がある場合には、早めに専門の医療機関に相談し、必要な検査や治療について医師とよく話し合うことをおすすめします。
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冬季うつはいつまで続く?3月からの変化とセルフケアのポイント
精神科コラム
《2026年3月2日9:34 公開》
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本記事では、「冬季うつ」と呼ばれる状態がいつまで続きやすいのか、そして3月以降に見られやすい心身の変化や、日常生活で取り入れやすいセルフケアのポイントについて、現在知られている知見をもとにわかりやすく整理します。
1.冬季うつとはどのような状態か
「冬になるとなんとなく気分が沈みがちになる」「春が近づいているのに、気持ちが晴れない日が続く」と感じる方は少なくありません。
一般に冬季うつ(季節性感情障害:Seasonal Affective Disorder)と呼ばれる状態は、秋から冬にかけて気分の落ち込みや意欲の低下などが強くなり、季節の移り変わりとともに和らいでいく傾向があるとされています。
代表的な症状としては、 以下のような類が挙げられ、日常生活や仕事、人間関係に影響が出ることもあります。
– 気分の落ち込み
– やる気が出にくい
– 眠気が強くなる、寝ても疲れが取れにくい
– 甘いものや炭水化物を摂りたくなる
– 体重が増えやすい
ただし、これらの症状があるからといって、必ずしも「冬季うつ」や特定の病名がつくとは限りません。似た症状は、通常のうつ病やストレス反応、生活リズムの乱れなど、さまざまな要因でも生じるため、自己判断で決めつけないことが大切です。
発症メカニズムについての考え方
冬季うつの背景として、日照時間の短さが関与している可能性が指摘されています。日光を浴びる時間が減ると、気分の安定に関わる脳内物質や、体内時計(サーカディアンリズム)のリズムが影響を受けると考えられています。
また、日照時間の変化は睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌リズムにも関わるとされ、これが「眠気が強い」「朝起きづらい」といった状態に関連している可能性もあります。
2.冬季うつはいつまで続きやすいのか
多くの方が気になるのは、「この状態はいつまで続くのか」という点でしょう。
一般的な傾向として、症状は秋から初冬にかけて目立ち始め、真冬に強くなり、その後、春先にかけて徐々に和らいでいくパターンが報告されています。
3月がひとつのターニングポイントになりやすい理由
3月頃になると、次のような環境の変化が起こります。
– 日照時間が少しずつ延びていく
– 太陽の高さが上がり、日差しの強さが変化していく
– 気温がゆるやかに上昇し、外出しやすくなる
こうした変化により、日中に自然光を浴びる機会が増え、それに伴って気分や睡眠リズムが整いやすくなる方もいます。もちろん、感じ方や回復のペースには個人差が大きく、「3月になれば必ず良くなる」といったものではありませんが、多くの方にとって春先は変化を感じやすい時期と言えるでしょう。
3.3月以降に期待できる心身の変化
気分の安定と意欲の回復傾向
日照時間の変化に伴い、朝起きたときの感覚や日中の気分が少しずつ軽くなる方もいます。興味や意欲が少しずつ戻ってきたり、活動量が増えたりといった変化も、この時期に意識しやすくなるポイントです。
体内時計の整いやすさ
朝の光を浴びる機会が増えると、体内時計が整いやすくなり、夜は眠りやすく、朝は目覚めやすいリズムが作られていきます。睡眠の質が改善することで、日中のだるさが軽減する方も少なくありません。
ビタミンDと生活全体の変化
日光に当たる時間が増えると、体内でビタミンDが作られやすくなります。ビタミンDは骨や筋肉の健康に関わるだけでなく、気分との関連も研究されています。
また、春は生活環境の変化が多い季節でもあり、新しい習慣を始めやすい時期です。生活リズムや運動習慣、食事内容などを見直すきっかけとしても活かすことができます。
4.回復を後押しするセルフケアの工夫
ここでは、医療機関での治療とは別に、日常生活の中で無理なく取り入れやすい工夫を紹介します。気になる症状がある場合は、以下を参考にしつつ、必要に応じて専門家に相談することもご検討ください。
朝の光を取り入れる
起床後は、カーテンを開けて外の光を取り入れたり、時間が許す範囲で短時間でも屋外を歩いたりすることが、体内時計を整える一助になると考えられています。曇りの日でも、屋外の明るさは室内より十分に強く、リフレッシュにもつながりやすくなります。
規則正しい生活リズムを心がける
毎日できるだけ同じ時間に起きて、同じ時間帯に眠るよう意識すると、心身のリズムが安定しやすくなります。休日だけ極端に遅く起きると、リズムが乱れやすくなるため、「平日と大きくずらしすぎない」こともポイントです。
無理のない範囲での運動
ウォーキングなどの軽い運動は、気分転換にもつながります。ハードな運動である必要はなく、「少し外を歩いてみる」「一駅分だけ歩く」など、小さく始めて習慣化していくイメージで取り入れてみると続けやすくなります。
食事のバランスを整える意識
主食・主菜・副菜を意識した食事や、魚・大豆製品・野菜・果物などをバランスよく取り入れることは、体調管理の基本にもなります。特定の食品だけで症状を改善しようとするのではなく、全体のバランスを整えることを意識することが大切です。
5.3月になってもつらさが続くときは
多くの方は春先にかけて少しずつ楽になっていく一方で、季節が変わってもつらさが続く、あるいは日常生活に支障が出るほどの状態が長引く場合もあります。
– 気分の落ち込みが数週間以上続いている
– 仕事や家事、学業に大きな支障が出ている
– 睡眠や食欲の変化がつらく、日中の活動が難しい
– 死にたい・消えたいといった考えが頭から離れない
このような場合は、「冬だから仕方ない」と我慢しすぎず、心療内科や精神科、かかりつけ医などの医療機関や、地域の相談窓口に早めに相談することをおすすめします。冬季うつに限らず、うつ病やその他の心の不調は、適切な支援や治療により、回復を目指すことができます。
インターネットの記事だけで自己判断するのではなく、「もしかして自分も当てはまるかもしれない」と感じた時点で、一人で抱え込まずに相談先を確保しておくことが、心の健康を守るうえで大切な一歩となります。
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