精神科で病名を教えてくれない理由と、そのメリット・デメリットについての記事です。
まず、精神科において他の内科や外科のように検査結果や画像診断のように客観的に症状を知ることは困難です。精神科では目に見えない、気分や心を扱っていますので、診断を下すことや病名の告知にはリスクもあり慎重になります。
例えば、早期の診断により別の疾患を見逃すなど誤診の可能性があります。また、同じ鬱病であっても症状は個人差があり、治療方針も異なります。
患者さんに必要なことは、病名の告知以前に、最適な治療と回復ですが、同時に、患者のプライバシー保護が背景にあります。
精神疾患に対する社会的な汚名や負のイメージから、社会的な差別や偏見にさらされる可能性があります。患者にとって大きな負担となりますので、病名を明かすことは適切でない場合があります。その一方で、病名を明かさなくても、専門家の治療や支援を受けることはできます。
また、初見での診断が難しい場合もあります。CT検査のように数値や画像で症状を判断できませんし、過去の症状や病歴、成育環境など患者さんの記憶に頼らざるを得ない部分が多くあります。現在の症状はあくまで経過の一時点にすぎず、病名が変わる可能性があるということです。
一方、デメリットとしては、患者さんが不安を感じる場合、今後の治療に支障をきたす可能性が考えられます。精神疾患は、身体的な病気と異なり、その症状が誤解や偏見を受けることが多く、病名を知らないことで、不安や心配が増すことが考えられます。
人はわからないものに対して不安になります。そこで、インターネットなどを用いて情報を集めようとすると、誤った方向に思い込みをしてしまう危険があります。
また、病名を告知しないことにより、医師と患者の信頼関係が損なわれる可能性もあります。
患者さんが病名を知らないまま治療を受けていると、患者は不信感を募らせることがあります。病名を聞いても明確な説明もなく告知がないと、治療に対しての前向きになれず、治療効果が低下することが考えられます。
そこで、以下をご参考ください。
・主治医に相談する
主治医に病名告知をしない理由を直接聞いてみましょう。
例えば、後から出てきた症状等により病名が変わる可能性や患者さんが病名を受け止める準備が出来たと判断した場合に告知予定だと告げられることもあります。
また、治療法や副作用、治療期間などの情報をより具体的に提供してもらうことができます。
・処方箋の作用を知る
症状や病名ではなく、処方されている薬の作用を医師や薬剤師に聞いてみることも大切です。患者さんの状態によっては、病名を受け止められない場合も考えられますので、まずは、適切な治療が上手く行き、日常生活し支障がないことを目指すことも大切です。
精神科の病名は、社会的な影響だけでなく、個人的な影響も考慮しなければなりません。精神疾患を抱える人には、自分の病名を知ることが自己認識の一助となり、治療に積極的に取り組むことができる人もいますが、その一方で、病名によって自己評価が低下したり、社会的な立場に悪影響を与えたりすることがあります。
医師は上記に考慮し、病名を教えるかどうかを適切に判断しなければなりません。患者との信頼関係を築き、必要な情報を提供することで、より効果的な治療を行うことができるからです。
※公開/更新日: 2023年3月31日 16:33