心療内科・精神科とよだクリニック

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物忘れだけじゃない 高齢者のてんかんと認知症を脳波でチェック

本記事では、高齢者のてんかんと認知症の違い、そして脳波検査がなぜ重要と考えられているのかについて、医学的知見に基づいてわかりやすく解説します。高齢のご本人やご家族が「認知症かもしれない」と感じたときに、見落とされやすいてんかんの可能性についても整理します。

1.なぜ高齢者のてんかんは見逃されやすいのか 

高齢者のてんかんが認知症と誤診されやすい最大の理由は、症状の出方が典型的な「けいれん発作」とは大きく異なることです。多くの人は「てんかん=全身が激しくけいれんする病気」というイメージを持っていますが、高齢者のてんかんでは、目立つけいれんを伴わず、意識がぼんやりする、反応がなくなるといった症状だけが出ることが少なくありません。

見逃されやすい症状 

高齢者のてんかんでは、次のような一見ささいに見える症状がみられます。 

– 数分間、急にぼんやりして呼びかけに反応しない。 

– 口をもぐもぐさせる、服をいじるなど同じ動作を繰り返す。 

– 会話の途中で突然黙り込み、その間の記憶が残っていない。 

これらは認知症の症状と非常によく似ているため、「加齢による物忘れ」「認知症が進んできた」と判断されてしまうことがあります。また、発作のあとにもうろう状態が数時間から数日続くこともあり、その間の様子だけを見ると「認知機能が急に落ちた」と受け取られてしまうこともあります。

2.認知症とてんかんの深刻な関係 

近年の研究から、認知症とてんかんは互いに関連し合うことが示されています。認知症のある人では、そうでない人に比べててんかんを起こしやすいことが知られており、高齢になって初めててんかんを発症した人の中には、のちに認知症が明らかになる例も報告されています。

一方で、てんかんのある人では、将来認知症を発症する頻度が高くなるというデータもあり、てんかんの発症から認知症が現れるまでの期間が短くなるという報告もあります。つまり、認知症とてんかんは相互にリスクを高める関係にあり、片方の病気が疑われる場合には、もう一方の可能性も意識することが重要です。

アルツハイマー病とてんかんの関連 

アルツハイマー型認知症では、ごく早期から脳内でてんかん性の異常な電気活動が起きていることがあり、そのような異常が認知機能の低下を早める一因になると考えられています。認知症症状が出始めたアルツハイマー病の患者さんに脳波検査を行うと、その一部でてんかん性の異常波が見つかることがあると報告されています。

3.脳波検査が鍵を握る理由 

てんかんの診断において、脳波検査は非常に重要な検査のひとつです。脳波検査では、頭皮上から脳の電気活動を記録し、てんかんに特徴的な波形(棘波や鋭波など)が出ていないかを確認します。臨床的にてんかんが疑われる症状があり、脳波検査で典型的な異常が確認されれば、てんかんと診断できる可能性が高くなります。

一方、認知症の診断では、病歴や問診、認知機能検査、画像検査などを組み合わせて判断することが多く、脳波検査が必須でない場合もあります。したがって、脳波検査を組み合わせることで、「認知症だけなのか」「てんかんを合併しているのか」を見分ける手がかりになることがあります。

高齢者てんかんにおける脳波検査の課題 

ただし、高齢者のてんかんでは、1回の脳波検査だけで異常波をとらえられないことも少なくありません。1回目の検査で異常が見つからなくても、てんかんではないと断定することはできないため、必要に応じて検査を繰り返したり、睡眠時の脳波を追加で記録したりすることが検討されます。症状の頻度や性質によっては、長時間のビデオ脳波モニタリングを行い、実際の発作と脳波の変化を同時に観察する方法が用いられることもあります。

4.高齢者てんかんと認知症の見分け方のポイント 

高齢者のてんかんと認知症には、いくつかの特徴的な違いがあります。 

– 状態の良い時と悪い時の差:てんかんでは、普段はほぼいつも通り過ごせるものの、発作のときだけ急に様子が変わります。認知症では、日による揺れはあっても、全体としては同様の症状が続きやすい傾向があります。 

– 記憶障害のパターン:てんかんでは、発作の前後など特定の時間帯だけ記憶が抜け落ちることがあります。認知症では、徐々に新しいことを覚えられなくなり、全体として記憶障害が進行していきます。 

– 症状の持続時間:てんかん発作そのものは数分程度と比較的短く、似たような症状が繰り返し起こることが特徴です。

症状記録の重要性 

高齢者のてんかんは診断が難しく、診察室だけでは判断がつかないことも多いため、日常生活での様子を記録しておくことが大きな助けになります。どのような症状が、いつ、どのくらいの時間続いたのか、発作の前後で意識や行動がどう変化したのかをメモしておき、診察時に医師に伝えることで、より正確な診断につながります。動画で様子を記録できる場合には、それも有用な情報になります。

正確な診断のために 

てんかんの診断には、脳波検査だけでなく、頭部MRIなどの画像検査、詳しい問診や家族からの情報提供が不可欠です。特に高齢になって初めててんかんが疑われる場合には、その背景に脳血管障害や変性疾患などが隠れていないかを確認するため、画像検査を行うことが一般的です。脳萎縮や小さな脳梗塞、白質の変化など、加齢とともに増える脳の変化が、てんかん発症の一因となる場合もあります。

「年齢のせい」「認知症だから仕方ない」と決めつけてしまう前に、てんかんの可能性も含めて総合的に評価してもらうことが大切です。気になる症状がある場合には、早めに専門の医療機関に相談し、必要な検査や治療について医師とよく話し合うことをおすすめします。