心療内科・精神科とよだクリニック

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その物忘れ、認知症じゃないかも…見過ごされる老人てんかん

この記事では、「老人てんかん」について、その特徴と見極め方、そして希望の持てる治療法まで、解説していきます。

1.認知症と誤解されやすい「老人てんかん」とは

「てんかん」と聞くと、多くの人が「若い人の病気」「突然倒れて痙攣する」といったイメージを抱くかもしれません。しかし、てんかんは子どもだけでなく、高齢になってから初めて発症することも珍しくなく、これを「老人てんかん」と呼びます。

そして最も重要な点は、老人てんかんの症状は、私たちが想像するような派手な発作ではないことが多い、ということです。むしろ、一見すると「年のせい」や「認知症の初期症状」と見分けがつかないような、非常に地味で分かりにくい発作が特徴です。

具体的には、以下のような症状が数秒から数分間続きます。

*   突然、動作が止まり、一点をぼんやりと見つめる

*   話しかけても反応がない、またはトンチンカンな返事をする

*   口をもぐもぐさせたり、舌なめずりをしたりする

*   意味もなく服をいじったり、手をもぞもぞと動かしたりする

*   意識がはっきりしないまま、目的もなく歩き回る

発作が終わると、本人は何事もなかったかのように元の状態に戻ります。しかし、発作中の記憶は全くありません。そのため、家族が指摘しても否定することがほとんどです。

このような小さな発作(専門的には「焦点意識減損発作」と呼びます)が頻繁に繰り返されると、脳の機能が徐々に低下し、結果として記憶力や注意力が落ちていきます。これが、老人てんかんが認知症と誤解されてしまう最大の理由なのです。

2.なぜ見過ごされてしまうのか?その背景と原因

認知症と似ている老人てんかんが、なぜ見過ごされ、適切な治療に結びつかないのでしょうか。それにはいくつかの背景があります。

第一に、前述の通り症状が非常に分かりにくいことです。家族でさえ「またぼーっとしてる」「疲れているのかな」「年のせいだろう」と見過ごしてしまいがちです。本人に自覚がないため、病気だという認識に至らないのです。

第二に、本人や家族、さらには医療関係者の間でも「高齢者のてんかん」に対する認知度が低いことが挙げられます。高齢者の物忘れ=認知症という先入観が強いため、てんかんの可能性が最初から考慮されないケースが少なくありません。

そして第三に、老人てんかんは高齢者特有の脳の変化が原因で起こることが多いという点です。最も多い原因は、過去に起こした脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後遺症です。自覚がないほどの小さな脳梗塞でも、脳にできた傷が原因で異常な電気信号を発し、てんかん発作を引き起こすことがあります。その他にも、頭部外傷の後遺症、脳腫瘍、そしてアルツハイマー病自体がてんかんを合併することもあります。

3.家族ができることと専門医への相談

もし、あなたの親御さんに認知症と似た症状が見られ、「老人てんかんかもしれない」と感じたら、諦めずに次のステップに進んでみてください。ご家族の観察こそが、正しい診断への最も重要な鍵となります。

* 症状を詳しく観察し、記録する

 「いつ、どんな状況で」「どのくらいの時間」「どのような様子だったか」「発作後の様子はどうか」を具体的にメモしておきましょう。また、スマートフォンなどで発作の様子を動画で撮影しておくこともおすすめです。言葉で説明するよりも何倍も正確な情報となり、診断の大きな助けとなります。

* 専門的な検査を受ける

診断のためには、脳の異常な電気活動を調べる「脳波検査」が不可欠です。一度の検査で異常が見つからないこともあるため、複数回検査を行うこともあります。また、脳梗塞の跡や腫瘍など、原因を特定するためにMRIやCTなどの画像検査も行われます。

これらの検査と、ご家族からの詳細な情報とを組み合わせることで、初めて正確な診断が可能になるのです。

そしてここからが最もお伝えしたい内容です。老人てんかんは、進行を緩やかにすることしかできない多くの認知症とは異なり、薬による治療で発作をコントロールし、症状を劇的に改善できる可能性のある病気です。

治療の基本は、「抗てんかん薬」の服用です。現在の薬は副作用も少なく、高齢者でも安心して服用できるものが増えています。適切な薬を適切な量で服用すれば、多くの場合、発作は完全に抑えられます。

発作がなくなれば、それに伴って起きていた記憶力や注意力の低下も食い止められ、場合によっては改善することさえあります。「認知症だと思っていた人が、実は治療可能なてんかんで、服薬を始めたら驚くほどしっかりした」というケースは、決して珍しい話ではないのです。

「年齢のせい」と諦めてしまう前に、少しでも疑わしいと感じたら、ぜひ発作の様子を注意深く観察し、動画に記録して専門医に相談してみてください。
※とよだクリニックではてんかん学会専門医、認知症学会専門医が診察にあたり、脳波検査の実施・判読が可能です。