心療内科・精神科とよだクリニック

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「物忘れ?」それ実はてんかんかも!認知症との見分け方

「物忘れが増えたから、そろそろ認知症かもしれない」。そう考えて受診してみたら、実は「てんかん」だったという例は珍しくありません。

この記事では、精神科医の立場から、認知症とてんかんの見分け方と、受けてほしい検査についてお話しします。

1. 物忘れとてんかんの要点

まず「最近の物忘れ」が発作のように突然起こり、同じパターンを繰り返す場合は、てんかんを疑ってほしい状況です。

認知症はゆっくり進行し、物忘れや判断力の低下が日常的に続くのが特徴です。

一方高齢者のてんかんでは、数分から十数分ほど意識がぼんやりして、その間の出来事だけを覚えていない、という形で現れることが多くなります。

発作が終わると、普段の会話や生活は保たれ、「しっかりしている時」と「おかしい時」の差がはっきりしやすい点も重要なポイントです。

この「波」があるかどうかが、認知症との大きな違いになります。

そして、てんかんは適切な薬物治療で発作をかなり抑えられる病気であり、早期に気づけば日常生活動作の低下を防ぎやすい病態だといえます。

 2. 認知症との違いと理由

認知症は、脳の神経細胞が少しずつ傷んでいくことで、記憶や判断力、見当識が全体的に落ちていく病気です。初期には「最近の出来事から忘れる」のが典型で、食事をしたこと自体を忘れたり、同じ話を何度も繰り返したりします。症状はほぼ毎日続き、よい日と悪い日の差はそれほど大きくないのが一般的な経過です。

一方、高齢発症のてんかんでは、突然ぼうっとする、動きが止まる、同じ動作を繰り返すなどの発作が、短時間で繰り返し起こります。

発作中や発作直後は、その時間帯の出来事を覚えていないため、「その間の記憶だけが抜け落ちる」一過性の物忘れとして気づかれます。けれども、発作以外の時間帯には、会話も理解力も保たれていることが多く、ここが「常に認知機能が落ちている」認知症と異なる点です。

また、てんかんには、主に記憶だけが障害されるタイプもあり、「一時的に記憶が飛ぶ」発作が何度も起きることで、周囲からは認知症と誤解されることがあります。

こうした場合でも、脳波検査でてんかん性の異常放電が確認されたり、抗てんかん薬がよく効いたりすることで診断に至ります。

背景には、脳卒中の後遺症やアルツハイマー型認知症などが潜んでいることもあり、「認知症があるからこそてんかんを起こしやすい」という関係も指摘されています。

3. 実際によくある具体例

外来でよく出会うのは、「会話の一部だけを忘れるお祖父さん」のケースです。

たとえば七十代の男性が、食事中に急に黙り込み、数分後に何事もなかったように話し始めることがあります。あとで家族が「さっき何を話していたか覚えていますか」と尋ねると、その数分間の出来事だけがすっぽり抜けている例です。

当初は「年齢のせいの物忘れ」と思われていましたが、詳しく話を聞くと、同じようなエピソードが何度も起こっていることが分かりました。

脳波検査で側頭葉を中心としたてんかん性放電が確認され、抗てんかん薬を開始したところ、こうした発作的な物忘れはほぼ消失しました。

この方は、認知症ではなく「高齢発症てんかん」が主な原因であり、早期治療によって仕事と趣味を続けることができました。

別の例として、「数年前の旅行だけを覚えていない」六十代の方もいます。

この方は、ある時期より前の家族旅行や子どもの結婚式の記憶が部分的に抜け落ちており、家族はアルツハイマー型認知症を疑って受診しました。

ところが、知能検査ではほとんど問題がなく、脳波で側頭葉の小さなてんかん性放電が見つかり、「てんかん性健忘」と診断されました。

発作そのものは短くて目立たないため、周囲は「性格が変わった」「急にぼんやりする」と感じていただけでした。

抗てんかん薬により新たな記憶の抜け落ちは止まり、生活機能も保たれましたが、診断まで数年を要したため、本人も家族も大きな不安を抱えていました。

このように、てんかんによる物忘れは「気づきにくいが治療すれば改善しやすい」という特徴があり、知っているかどうかが運命を分けます。

 4. 早期受診と検査のすすめ

では、「認知症か、てんかんなのか」を見分けるために、どのような行動を取ればよいでしょうか。

まず家族にお願いしたいのは、「おかしい様子がいつ、どれくらい続くか」をメモに残すことです。数分単位で同じようなぼんやりが繰り返され、その前後を本人が覚えていない場合は、てんかんを疑う大きな手がかりになります。

受診時には、問診に加えて、認知機能テスト、血液検査、脳のCTやMRIといった画像検査が行われます。さらに、てんかんが疑われる場合は、脳波検査でてんかん性の異常放電がないかを調べることが重要になります。

これらを総合して、「認知症が主体なのか」「てんかんが主体なのか」「両方が関係しているのか」を専門医が判断します。

てんかんと診断された場合、抗てんかん薬がよく効き、発作を大きく減らせるケースがほとんどです。もし「認知症だから仕方ない」と諦めると、治療の機会を逃し、転倒や交通事故などのリスクも高まります。

一方、認知症が主な原因であっても、てんかんを合併している場合には、両方に対応した

治療計画を立てることで生活の質を守れます。​

物忘れの陰に潜むてんかんを見逃さず、一緒に対策を考えていくことが、これからの高齢社会を支える大切な一歩になります。