本記事では、社会不安障害で仕事が続かなくなる原因と、具体的な対策について解説します。
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社会不安障害が仕事を困難にする理由
社会不安障害は、対人関係に強い緊張や恐怖を感じ、身体症状まで現れる精神疾患であり、職場環境で特に影響を受けやすい病気です。 大勢の人の前に出たり、他者からの評価を受ける場面で、過度な不安や緊張から呼吸困難、動悸、手の震え、大量の発汗などの症状が出ます。 この症状は意志の力だけでは抑えられず、仕事のパフォーマンスに直接影響を及ぼします。
現代の職場では、プレゼンテーション、会議での発言、上司や同僚との関係、電話対応、顧客との面談など、対人コミュニケーションが避けられない業務が多く存在します。また、近年問題になってきた各種ハラスメントの被害や対応なども、社会不安障害の方にとって、これらすべてが強いストレス源となり、毎日の出勤そのものが苦痛になります。 さらに、症状が出ることへの予期不安が生まれ、「また失敗するのではないか」という恐怖が常につきまとうようになります。
その結果、仕事への集中力が低下し、本来持っている能力を発揮できない状態が続きます。 周囲からは「やる気がない」「コミュニケーション能力が低い」と誤解されやすく、自己評価もますます下がってしまいます。 こうした悪循環が、転職を繰り返したり、退職せざるを得ない状況を生み出しているのです。
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仕事が続かなくなる具体的な原因
社会不安障害が発症する背景には、脳内の神経伝達物質のバランス異常が関係しています。 特に、不安や恐怖を調整する役割を持つセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の不足が、過剰な不安反応を引き起こすと考えられています。 これは単なる気の持ちようではなく、脳の機能的な問題であり、医学的治療が必要な状態です。
また、遺伝的な要因も無視できません。 家族に社会不安障害や極度に緊張しやすい性格の人がいる場合、自分も発症しやすい傾向があります。 さらに、幼少期のトラウマや厳しい家庭環境、過去に人前で恥ずかしい思いをした経験なども、発症の引き金になります。
職場環境そのものも大きな要因となります。 業務量が多すぎると体力的・精神的に消耗し、症状が出やすくなります。 また、異動や出張、新しいプロジェクトへの参加など、環境の変化が生じると緊張や恐怖が強まりやすくなります。 社会人になってから職場での人間関係や業務上のプレッシャーがきっかけとなって発症するケースも少なくありません。
これらの要因が複雑に絡み合うことで、日常的に強いストレスにさらされ、仕事を続けることが困難になっていきます。
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職場で起こりやすい実例
診察室でよく聞く訴えとして、「会議で発表する順番が回ってくると、心臓がバクバクして声が震える」というものがあります。 ある30代の営業職の男性は、プレゼン中に手が震えて資料をめくれなくなり、顔が真っ赤になって冷や汗が止まらなくなりました。 その後、プレゼンの予定があるだけで前日から眠れなくなり、最終的には営業職を辞めざるを得なくなりました。
受付や窓口業務を担当する20代の女性は、人前で書類に記入する際に手が震えて文字が書けなくなる「書痙」という症状に悩まされていました。 周囲の視線が気になり、「震えを見られたらどう思われるか」という不安がさらに症状を悪化させます。 結局、人前で文字を書く場面を避けるために配置転換を希望しましたが、それでも不安は消えませんでした。
また、電話対応が苦手で、電話が鳴るたびに動悸がして息苦しくなる方もいます。 「うまく話せなかったらどうしよう」という予期不安が強く、電話を取ることを避けるようになります。
こうした症状は本人の努力不足ではなく、病気による症状であることを理解する必要があります。
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乗り越えるための対策法
社会不安障害は、適切な治療によって症状をコントロールし、仕事を続けられるようになる病気です。 まず最も重要なのは、早期に精神科や心療内科を受診し、正しい診断を受けることです。 症状が6か月以上続き、日常生活や仕事に支障が出ている場合は、専門医の診察を受けてください。
治療の柱は、薬物療法と認知行動療法の組み合わせになります。 薬物療法では、セロトニンの働きを調整するSSRIという抗うつ薬で、脳内の神経伝達物質のバランスを整えます。 また、必要に応じて抗不安薬を併用することで、症状を軽減できます。
認知行動療法では、「失敗したらどうしよう」という極端な思考パターンを修正し、段階的に不安場面に慣れていくトレーニングを行います。 小さな成功体験を積み重ねることで、自信を取り戻すことができます。
職場での環境調整も効果的です。 上司や人事担当者に相談し、業務量の調整や配置転換を検討してもらうことも一つの方法です。 無理に苦手な業務を続けるのではなく、自分の特性に合った働き方を見つけることが大切です。 また、リモートワークなど、対面での緊張が少ない働き方を選択できる場合もあります。
社会不安障害で仕事が続かないと悩んでいる方は、決して一人ではありません。 この病気は治療できる疾患であり、多くの方が適切な治療を受けて職場復帰を果たしています。 症状を我慢し続けるのではなく、早めに専門医に相談し、あなたに合った治療法を見つけてください。
※公開/更新日: 2026年1月24日 10:00

