うつ病と認知症の関係性についてのコラムです。
認知症とうつ病は別の疾患ですが、重なる症状がいくつもあります。
どちらも、これまで出来ていたことが次第に難しくなり、日常生活に支障をきたすという共通点があります。
認知症とは、後天的な脳の障害によって機能が低下する病です。新しいことが覚えられない、今まで出来ていたことが出来なくなり日常生活に支障をきたし、何らかの介護を必要とする状態です。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など脳の変性萎縮や、脳梗塞や脳出血など脳の血管の障害などで起こります。
遺伝的要素と生活習慣が複合的に発症リスクを高めると考えられています。
症状は多岐にわたり、単に物忘れがあるだけでは認知症とはいえません。
夕食の内容を忘れるのではなく、夕食を食べたこと自体を忘れてしまうなど、記憶が丸ごと抜けているのが違いと言えます。
また、妄想や暴言、暴力など攻撃的になったり、時間や場所がわからなくなり昼夜問わず徘徊するなどの症状も見られます。初期は不安な気持ちもあるのですが病状が進んでくると不安さえも忘れ、感じなくなるのが特徴です。
次にうつ病と認知症の関係ですが、似たような症状も多く、認知症の初期症状として精神症状が先行するケースや、うつ病の症状として認知症とよく似た症状を呈すること(うつ病による仮性認知症)もありますし、二つを併発して発症することもあります。気分の落ち込みや不安感、性格の変貌、日常生活に支障が出るほどの物忘れや判断力の低下など、どちらの病気なのか診断はとても難しいです。
専門医が診察し、必要な検査を実施しなければ判断はできないと考えます。
併発していた場合、両者に効く薬はありません。適切な投薬治療に加えて、地域包括支援センターなどと連携したサポート体制の構築や本人・家族への疾病教育が必要となります。
適切な治療やサポートを受けるためにも早期の専門医による診察をお勧めします。
物忘れが増えた、今まで出来ていたことが出来なくなったなど、異変を感じられる時には先送りせず早めに専門医※を受診して下さい。
※この場合の専門医としては精神科医、脳神経内科医などであるが認知症学会専門医、老年精神医学会専門医、神経学会専門医などを有することがより望ましい。
※公開/更新日: 2023年1月5日 23:20