心療内科・精神科とよだクリニック

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境界性人格障害の基本と治療法

精神科の視点から境界線人格障害についてのコラムです。

境界性人格障害は、複雑な疾患であり、患者様の日常生活や人間関係に深刻な影響を与えることがあります。この障害は感情の不安定さ、自己イメージの不安定性、そして衝動性の問題を特徴としています。

本コラムでは、境界性人格障害の特徴や診断基準に加えて、精神科医としての視点から有効な治療法について書いていきます。患者様の痛みを理解し、最適なケアを提供するための知識です。

境界性人格障害の特徴

境界性人格障害は人格障害の一種で、その本質は感情の不安定さ、人間関係の困難さ、そして衝動性の問題です。人格障害はパーソナリティー(人格)が不安定であり、自ら悩むか他人を害するという特性を持ちます。境界性人格障害は、感情の急激な変化が特徴で、日常生活における安定が難しくなります。

人格障害には、遺伝子と環境の相互作用が関与しており、遺伝的な傾向が環境的な要因によって影響を受けることで発症することがあります。治療において、心理療法や精神療法が中心となり、症状の軽減が期待されますが、個々のパーソナリティによる疾患であるため、長期にわたる治療が必要となることもあります。

境界性人格障害の代表的特徴

境界性人格障害は、以下の代表的な特徴を持っています。

・スプリッティング(二分法的思考):他者を極端に良いか悪いかに分ける傾向があります。

・自己への敏感さ:自分自身に対する評価や態度に敏感で、一貫性に欠ける自己イメージがあります。

・周囲の人々を操作しようとする傾向: 他人を自分の思い通りに動かそうとする行動が見られます。

・衝動的な行動傾向:決断や行動を突然に行い、その後後悔することがあります。これには自傷行為や薬物乱用が含まれます。

・気分の不安定性:感情の急激な変化があり、他人がついていけないほど頻繁に変わります。

・激しい怒りと傷つきやすさ:感情のコントロールが難しく、怒りっぽい一方で傷つきやすい傾向があります。

・自傷行為と自殺的行動の繰り返し: 自傷や自殺の行動やそぶりが繰り返され、周囲に心配や動揺を与えます。

・同一性拡散: 自己イメージや自己認識の変化が頻繁に起こり、自己同一性の確立が困難です。

・精神病症状に近縁の症状: 妄想反応や解離反応など、一過性の精神病的な症状に似た経験があります。

境界性人格障害は、人間関係、自己像、気分、行動の不安定性を特徴とし、拒絶や見捨てられる可能性に極度に過敏です。

境界性人格障害の診断基準

診断の重要性

米国精神医学会のDSM5によると、境界性人格障害の診断基準は、特定の特徴が5つ(またはそれ以上)現れることとされます。その特徴には、人間関係、自己像、感情の不安定さ、衝動性の広範な様式が含まれます。

具体的な診断基準

境界性人格障害の診断基準には、見捨てられることへの恐れやそれを避けるためのなりふり構わない努力、不安定な人間関係、自己イメージの不安定さ、衝動的な行動、自傷行為、感情の不安定さ、空虚感、怒りの制御の困難、妄想様観念などが含まれます。

これらの症状が一つのパターンとして現れる際に診断が下されます。

医療的アプローチの重要性

境界性人格障害の治療には、薬物療法と心理療法が不可欠です。これらの治療法は、症状の管理や患者の自己調整能力の向上に大きく寄与します。

・薬物療法とその役割

薬物療法では、抗うつ剤や抗不安薬が感情の安定や怒りのコントロールに役立ちます。これらの薬物は気分の落ち込みや強い不安感などの症状を和らげるのに役立ちます。ただし、個人差や副作用、薬物乱用には留意する必要があります。

・心理療法とその重要性

心理療法は特に重要で、認知行動療法が有効です。精神科医や臨床心理士によるカウンセリングや行動療法に根気よく取り組みます。これらのアプローチは、患者の症状管理や自己調整能力の向上に効果的です。

・治療期間と成果

適切な治療によって、自傷行為や自殺企図、怒りのコントロールが改善される傾向があります。

実際の診察の際は、各患者様の症状に合わせ、医師と患者様が協力して治療を行います。個人差や副作用の問題もありますので、状態にあわせて薬の種類を変更、または、治療方針を変更する場合もあります。不明な点はお気軽にご相談ください。