抜毛症(トリコチロマニア) Trichotillomania
抜毛症とは、抜毛癖とも言われ、自分の体毛(頭髪、まゆ毛、まつげ、ひげ、陰毛、手足の毛等)を自分で抜いてしまう病気です。子供や思春期の女性に多いと言われていましたが、最近では成人男性でも増えているといわれます。年齢とともに自然に治る人もいますが、長い人だと何十年も悩まされることもあります。症状の強さに関しても無意識に抜いてしまうという方もいれば、どうしても抜きたくなる衝動を制御できない方もいます。
米国精神医学会のDSMⅣでは衝動制御障害の一つに分類され、強迫性障害との併存が認められていましたが、DSM5では強迫性障害が不安障害のカテゴリーから分離され新たに強迫関連障害というカテゴリーが設けられ、抜毛症も強迫性障害とともにこのカテゴリーに分類されています。抜毛症は、衝動を抑えられないことが強迫性障害と似ていますが、強迫的な癖や習慣であるという考え方が強まり、最近では爪かみ、唇を噛む、口の中を噛むといった「BFRBs(Body-focused repetitive behavior/身体に対する反復的行動)の一種だといわれています。
抜毛症の原因ははっきりとわかっていません。きっかけとなる契機や環境は人によって違います。不安やストレスが長く続く場合(受験、学校、職場での人間関係、厳しすぎる親のしつけ等)、トラウマを有している等、情緒不安定な時に発生しやすい傾向がありますが、一方で退屈している時に起きる人もいます。自傷行為ではなく、不安やイライラ等のネガティブな感情を制御するための無意識的な行動と考えられています。
抜毛症(トリコチロマニア)の治療法
上記のように抜毛症は単なる癖ではなく、病気であり、本人の社会生活に与える影響は無視できないものであるため、治療的介入が必要です。
薬物療法としては、一般的に抗うつ薬の1種であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が処方されます。SSRIはうつ病の他、パニック障害、社会不安障害等に使用されます。抜毛症と関連のある強迫性障害や衝動制御障害にも使用される薬剤です。薬物療法は全ての人に有効というわけではないので、認知行動療法等の心理療法が併用されます。
※公開/更新日: 2017年12月4日 12:52