副作用
薬には様々な副作用があります。肝機能障害や腎障害等はどの薬剤でも生じる可能性があります(腎障害は腎排泄型薬剤)。特に危険な副作用としては薬疹、顆粒球減少症等が挙げられ、抗生物質、抗てんかん薬等で多いですが、他の薬剤でもみられます。体質によるものなので、誰にでも生じるわけではありませんが、初期対応が重要です。
抗精神薬の副作用
抗精神薬は脳に作用する薬ですから、眠気、ふらつき等はどの薬でも生じますが、各薬剤に特徴的なものもあります。
抗精神病薬はドーパミンD2受容体を遮断する効果がありますので、振戦、筋硬直、流涎、小刻み歩行等パーキンソン病様の錐体外路症状がみられます。服薬当初や増量した時にじっとしていられなくなるアカシジア(静座不能症)がみられることもあります。
新規抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)はパーキンソン病様の症状が生じにくいのが特徴ですが、全く生じないわけではなく、一部の薬では食欲増進効果が著しく体重増加や糖尿病の悪化がみられます(オランザピン、セロクエルは糖尿病で使用禁忌)。
抗うつ薬の副作用
最も古い三環系抗うつ薬では抗ヒスタミン効果による食欲増進や眠気、抗コリン作用による口渇や便秘、排尿障害、抗α1作用による起立性低血圧等の副作用が多いのが特徴です。この問題を解決するために新しく開発されたSSRI(セロトニン選択性再取り込み阻害薬)ではセロトニン由来の消化器症状(吐き気、下痢等)がみられるため少量から始めて胃薬を併用します。
SSRIで特に注意すべき副作用としてはactivation症候群があります。activation症候群はSSRI(SNRIでも生じうる)投与初期や増量期に生じやすく不安、焦燥、不眠、敵意、衝動性、易刺激性、アカシジア、パニック発作、軽躁、躁状態等を呈し、悪化すれば自傷や自殺企図につながります。
同様に最近よく使われる抗うつ薬としてSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)がありますが、SSRI同様に消化器症状やactivation症候群がみられ、その他ノルアドレナリンの作用により排尿障害や起立性低血圧がみられます。
SSRI、SNRIともに突然薬を中断すると離脱症状(怠薬症状)がみられます。SSRIでは風邪のような症状、不眠、吐き気、ふらつき、感覚障害(シャンシャン、ピリピリ) 、過剰覚醒等の症状がみられます。SNRIではSSRIの症状に加え頭痛等がみられるため、減量や断薬は計画的に段階的に行うことが重要です。
抗不安薬や睡眠導入剤の副作用
抗不安薬や睡眠導入剤はともにベンゾジアゼピン系薬剤が多く、これらの共通の作用は抗不安作用、筋弛緩作用、催眠作用、抗けいれん作用ですので、日中の眠気やふらつき、けだるさ等が生じます。
依存性がみられることも問題であり、強力価・短時間作用型の抗不安薬に特に注意が必要です。高齢者が睡眠薬を服用して夜間トイレに行き転倒受傷するケースがあり注意が必要です。その他せん妄や食行動異常がみられることがあります。
いまだに尿素系やバルビツール系睡眠薬を投与している医療機関がありますが、これらはベンゾジアゼピン系以上に耐性、慣れ減少のため使用量が増えていき、さらに呼吸抑制、心毒性があるため非常に危険です。
抗てんかん薬の副作用
抗てんかん薬は先述の通り薬疹、顆粒球減少症等の重篤な副作用のリスクが高いものが多く、また薬効がみられる血中濃度域が狭く、治療域を超えると失調、羽ばたき振戦、眼振、複視等の中毒症状がみられます。ゾニサミドやトピラマートでは発汗障害がみられることがあるので注意が必要です。
しっかりコミュニケーションを
紹介した副作用は全てではありません。また副作用がない薬はありませんが、医者や薬剤師と患者様がしっかりコミュニケーションをとることで副作用を最小限にとどめ、良好な治療効果がみられます。過度におそれることのないようにお願いいたします。
※公開/更新日: 2017年12月5日 13:03