抗不安薬 Anxiolytic
抗不安薬は一般に安定剤と呼ばれているものです。正式にはベンゾジアゼピン系抗不安薬と言い、GABA-A受容体のベンゾジアゼピン受容体に結合することによって作用します。その名の通りベンゾジアゼピン系睡眠導入剤とはほぼ同一の薬剤で不安や緊張を軽減する抗不安作用、睡眠に関する作用である催眠作用、睡眠増強作用、筋緊張を軽減する筋弛緩作用、けいれん発作を抑制する抗けいれん作用を有します。
夜に睡眠に関する作用があれば、効果となりますが、昼間に出現すれば副作用となります。筋弛緩作用についても肩こりへの一定の効果がありますが、お年寄りが睡眠薬で転倒する等副作用にもなりうります。
長期間大量の抗不安薬を連用している方が、突然中止すると離脱症状が生じますが、ひどい時はけいれん発作を呈することもあります。このように作用と副作用は表裏一体です。
抗不安薬はこれらの作用の強弱、作用時間の長短により各薬剤の特徴となり、使い分けを行います。一般にエチゾラム等高力価、短時間作用型の薬剤は効果を実感しやすい一方で、依存性が生じやすくなります。当院開業当初からエチゾラム依存症、エチゾラムの離脱症状で苦しんでいる患者様を多数経験しましたが、内科、外科等一般科の先生方だけでなく専門医である精神科の先生がエチゾラムを安易に大量・長期に投与されていました。驚くべきことにエチゾラムは他の抗不安薬と違って30日間という投与日数制限を受けていませんでしたが、ようやく平成28年度に投薬日数制限されました。
ベンゾジアゼピン系薬剤はアルコールとの併用を避けるべきです。アルコールもGABA-A受容体に作用する薬剤であり、その併用により気分高揚、健忘等を呈します。またアルコールを多飲される方は薬剤が効きにくいと言われますが、これはアルコール連用により肝臓の代謝酵素が誘導され、分解速度が速くなるためです。このため単純な代謝経路であるグルクロン酸抱合で代謝されるロラゼパムを処方します。非ベンゾジアゼピン系の抗不安薬としてセロトニン1A受容体部分作動薬であるタンドスピロンクエン酸塩があります。
抗不安薬の長期連用は避けるべきですし、高齢者では転倒受傷のリスクがありますが、どうしても必要な場合には選択肢の1つとなります。
※公開/更新日: 2017年12月4日 13:10