減薬と断薬
薬物治療は少量から開始し(初期量)、副作用や効果(効果と忍容性)を確認しながら、徐々に増量(漸増)します。それぞれの薬には最大投薬量(最大容量)が決まっています。最大容量は併用薬により変化することがあり注意が必要です(薬物相互作用)。十分な量を使用したにも関わらず、十分な効果が得られない時には他の薬に置き換えます。
維持用量・減薬・漸減
このようにして十分な治療効果が得られた場合、しばらくの間その量で維持します(維持用量)。一定の期間症状が安定した場合、あるいは初期には問題にならなかった眠気などの副作用が問題となった場合には減量を開始します(減薬)。減薬時には症状の再発・悪化やリバウンド、離脱症状などに注意しなければなりません。急激な減量によりこれらの症状が出現しやすいのでゆっくり減量します(漸減)。
睡眠導入剤
睡眠導入剤の急激な減量や中止で反跳性不眠が出現します。抗不安薬もベンゾジアゼピン系ですので急激な減量や中止により離脱症状が生じます。重症例ではけいれん発作を来すことがあり計画的に時間をかけて行う必要があります。
SSRI・SNRI
離脱症状が特に有名な薬剤としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)があります。これらの薬剤を減量するときには事前に予想される離脱症状をきちんと説明して、漸減することが必要です。
抗てんかん薬
抗てんかん薬の減量ではリバウンドの他、薬物相互作用による他の抗てんかん薬の血中濃度の変化に注意が必要です。古い抗てんかん薬であり、睡眠薬としても使用されるフェノバルビタールは特に減量によるリバウンド、相互作用による他剤の血中濃度上昇に注意が必要です。
投薬中止(断薬)
さて減量のその先にあるもの、目標は患者様にとっても医師にとっても投薬中止(断薬)です。どの患者様に対しても投薬中止ができるわけではありません。統合失調症や双極性感情障害など慢性疾患では再発防止のために治療継続が必要です。てんかんの方に関しては一定の条件を満たした方について投薬中止を目指すことが可能ですが、減量中に再発作があった場合は治療を再開し継続することが必要です。
このように減薬、断薬については病気や病状により異なりますので、しっかり患者様と医師が話し合い、説明を行い、納得いただく必要があります。
※公開/更新日: 2017年12月5日 13:08