睡眠導入剤 Hypnotics
睡眠導入剤(以下睡眠薬)というと、①やめられなくなる②大量に飲むと死ぬ等の怖いイメージを抱いている人が多いものです。私の経験でも不眠に対して睡眠薬を処方して症状が改善したのに知人や親族から「やめられなくなる。」「こわい。」「呆ける。」「精神病になる。」等と使用を止められて中断する人がかなりの割合でいます。
これらは全くのデマではなく、以前にはその様な特性をもつ薬剤が用いられていたことがありましたが、最近の睡眠薬にはその様な心配はほとんどありません。しかし医師の指示に従って用法・用量を守る等の最低限の注意は必要です。
このページでは代表的な睡眠薬の分類と名称、症状別の適応、使用上の最低限のルール(注意)についてお知らせします。
睡眠薬の分類
以前はバルビタール系、尿素系の薬剤が用いられましたが、現在の主流はベンゾジアゼピン系の薬剤です。これらの薬剤は基本的な形(骨格)は類似していますが、枝葉(側鎖)等の違いにより、異なった特性がみられます。
睡眠薬ではその使用目的から催眠あるいは睡眠増強作用があるのは当然ですが、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用も有し、薬剤によりその強さが異なります。また1回服用してから血中濃度が最高に達するまでの時間(Tmax)、最高に達した血中濃度が半分に低下するまでの時間(T1/2)が薬剤により異なり特にT1/2は作用時間に直結し、これにより睡眠薬は超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類されます。
(かっこの中は商品名)
超短時間型
トリアゾラム、ゾピクロン、ゾルピデム
短時間型
ブロチゼパム、ロルメタゼパム、リルマザホン
中間型
フルニトラゼパム、エスタゾラム、ニトラゼパム
長時間型
フルラゼパム、ハロキサゾラム、クアゼパム
※ゾルピデム、クアゼパムはω1受容体選択性が高く、ふらつき、転倒等筋弛緩作用に関係するω2受容体に作用しないことにより安全性が高いと言われています。また多くの睡眠薬が徐波睡眠(深い睡眠)を増加させる効果がないのに対し、徐波睡眠を増加させることが知られています。
※最近睡眠覚醒リズムを司る神経伝達物質であるメラトニン類似の薬剤(メラトニン作動薬)や睡眠や摂食行動に関連するオレキシン受容体への作用を持つ薬剤(オレキシン受容体拮抗剤)等新しい作用機序を持つ睡眠導入剤が開発され、睡眠薬選択の幅が広がりました。
※当院では尿素系、バルビツール系睡眠薬は使用しません。
不眠のタイプと睡眠薬の使い分け
- 入眠障害:いわゆる寝付きが悪いもの→超短時間~短時間型
- 熟眠障害:熟睡感がない→短時間~中間型
- 途中覚醒:何度も目が覚める→中間~長時間型
- 概日リズム障害:メラトニン作動薬
早朝覚醒はうつ病の可能性があり、専門的な診断と治療が必要となる可能性があります。早めに専門医に相談してください。
またイビキがひどい、睡眠中に呼吸が止まっていることがあると指摘される、あるいはあしがムズムズする等の症状を伴う不眠の場合はより専門的な検査・診断が必要となりますので主治医に相談してください。
睡眠薬を服用する上での注意点(これだけは守りましょう)
- 就寝直前(30分くらい前)に服用する。
- アルコールと一緒に服用しない。
- 自分の勝手な判断で量を加減したり、中止しない。
- 自分の薬を人にあげたり、他人の薬をもらって飲んだりしない。
- その他、心配なことや服用中に変わったことがあれば医師に相談する。
※公開/更新日: 2017年9月5日 13:04