睡眠障害 Sleeping disorder
睡眠障害は不眠症、過眠症、概日リズム睡眠障害、睡眠呼吸障害、むずむず脚症候群と周期性四肢運動障害、ねぼけに大別されます。ここでは頻度の高い不眠症と概日リズム障害について説明いたします。
不眠症とは
不眠症は成人の21.4%にみられ、中年以降に急増、40-50歳代でピーク、女性に多いことが知られています。症状は入眠障害(寝つきが悪い)、中途覚醒(いったん入眠した後何度も目覚める)、早朝覚醒、熟眠障害等がみられます。不眠症が続くと日中の眠気が増し、精神運動機能の低下から注意力や作業能力が低下します。
不眠症の治療
治療には睡眠導入剤(睡眠薬)の投与だけでなく、睡眠および睡眠衛生に関する教育指導を併用します。
現在の睡眠薬はベンゾジアゼピン系睡眠導入剤ですが、作用時間により超短時間型、短時間型、中間型、長時間型と分類され、症状により使い分けます。非ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤として開発されたゾルピデム(マイスリー)やクアゼパム(ドラール)はω1選択性が高く、ベンゾジアゼピン系の問題点であったふらつき、転倒が少ないことが利点です。この他古い睡眠薬であるバルビツール酸系(フェノバルビタール、イソミタール等)、非ベンゾジアゼピン系(尿素系のブロバリン等)がありますが、早期に耐性、依存性が出来やすく、大量服薬すると呼吸抑制により致死的な転機に至ることから現在では使用されません(一部の医療機関で品用されていますが非常に危険です)。最近ではメラトニン作動薬(ロゼレム)、オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ)等従来の睡眠薬の作用機序と異なる睡眠薬が発売されています。
概日リズム睡眠障害
概日リズム睡眠障害は時差症候群(いわゆる時差ボケ)、交代勤務によるもの、睡眠相交代症候群等があります。体内リズムの調整は1-2時間が限界で、再同調するには数日から2週間が必要です。時差症候群は5時間以上の時差がある場合に生じやすく、再同調までの期間に不眠、昼間の眠気、身体不調を生じます。西飛行に比べて東飛行が重症となりやすいと言われています。交代勤務者でも時差症候群と同様の状態を呈しますが、常に勤務時間帯が変化するために睡眠のタイミングと体温リズムがずれてしまいます。
睡眠相交代症候群は高校生の0.4%、一般人口の0.17%に認められ、明け方にならないと眠れず昼にならないと起きられない、起きたとしても眠気や集中困難で仕事・学業が困難であるが夕方になると可能となる等の特徴があります。生活指導、時間療法(就寝時間を3時間ずつ遅らせる方法)、薬物療法等が実施されます。これに対して高齢者は睡眠相が前進しやすい特徴があります。
※公開/更新日: 2017年12月4日 12:37