心療内科・精神科とよだクリニック

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それ、ペットロスかも?体調不良として現れる代表的な症状とは

かけがえのない家族の一員であるペットとの別れは、言葉では言い表せないほどの深い悲しみをもたらします。近年、「ペットロス」という言葉が広く知られるようになりましたが、その影響は心の痛みだけに留まらず、思いがけない「体調不良」として現れることがあるのをご存知でしょうか。

 

この記事では、精神科医・心療内科医の視点から、ペットロスが心だけでなく体にどのような影響を与えるのか、そして見逃しやすい体調不良のサインについて、詳しく解説していきます。ご自身の、あるいは身近な方の心と体の声に耳を傾けるきっかけとなれば幸いです。

 

1.ペットロスとは?心だけでなく体にも影響が出る理由

ペットロスとは、愛するペットを失うことによって生じる心身の様々な反応を指します。単なる「ペットがいなくなった寂しさ」ではなく、深い喪失体験として捉えることが重要です。

 

⑴         大切な存在を失う喪失感が心身に与えるストレス

ペットは、多くの人にとって単なる動物ではなく、家族であり、友人であり、心の支えとなる存在です。そのかけがえのない存在を失うことは、人生における大きな喪失体験であり、強い精神的ストレスを引き起こします。このストレスは、心理的なダメージだけでなく、自律神経系や内分泌系(ホルモン分泌)にも影響を及ぼし、身体的な不調の原因となります。

 

⑵         ストレスホルモンが増えると体調にも変化が現れる

強いストレスを感じると、私たちの体は「コルチゾール」などのストレスホルモンを分泌します。これらのホルモンは、一時的には危機的状況に対応するために役立ちますが、長期間にわたって過剰に分泌され続けると、免疫力の低下、血圧の上昇、血糖値の変動などを引き起こし、様々な体調不良を招く可能性があります。倦怠感、頭痛、胃腸の不調などは、このホルモンバランスの乱れが関係していることが多いのです。

 

⑶         「悲しみを我慢する」ことで体に出る無自覚な反応

「ペットロスで悲しむなんて」「いつまでもメソメソしてはいけない」といった社会的なプレッシャーや、自分自身で感情を抑え込もうとすることで、悲しみが十分に表現されない場合があります。しかし、感情を無理に抑圧すると、そのエネルギーは行き場を失い、身体的な症状として現れることがあります。これを「身体化」と呼びます。頭痛、肩こり、腹痛、動悸など、原因不明とされる体調不良の背景に、抑圧された悲しみが隠れているケースは少なくありません。

 

2.見逃しやすいペットロスの体調不良とは?

よくある身体の変化に注意

ペットロスによる体調不良は、一般的な病気の症状と似ているため、見逃されやすい傾向があります。以下のような症状が続く場合は、ペットロスとの関連を考えてみましょう。

 

⑴         風邪でもないのに続く倦怠感や微熱

十分な休息をとっても、体が重く、だるさが抜けない。あるいは、37度前後の微熱が続く。これらは、ストレスによる免疫力の低下や、自律神経の乱れが原因である可能性があります。風邪薬を飲んでも改善しない場合は、背景に心理的な要因がないか考えてみる必要があります。

 

⑵         消化不良や腹痛など胃腸の不調が続く場合

食欲不振、胃もたれ、吐き気、便秘、下痢といった胃腸症状も、ペットロスでよく見られる身体反応です。ストレスは胃腸の働きをコントロールする自律神経に直接影響を与えるため、消化機能が低下したり、過敏になったりすることがあります。

 

⑶         自律神経の乱れによる動悸やめまいもサインに

突然、心臓がドキドキする(動悸)、立ちくらみやフワフワするようなめまいを感じる、といった症状も、自律神経のバランスが崩れているサインの可能性があります。ストレスや抑圧された感情は、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズに行えなくさせ、こうした循環器系の症状を引き起こすことがあります。

 

3.ペットロスで現れやすい症状一覧|

だるさ・頭痛・不眠などのサインとは

上記以外にも、ペットロスでは以下のような様々な身体症状が現れる可能性があります。

 

⑴         朝起きられない・日中もだるい…慢性的な疲労感

睡眠時間を確保しているはずなのに、朝すっきりと起き上がれない。日中も強い眠気やだるさを感じ、活動する意欲が湧かない。これは、精神的なエネルギーの消耗が激しいことや、睡眠の質の低下が関係していると考えられます。

 

⑵         集中力低下や頭痛に悩まされるケースも多い

仕事や家事に集中できない、考えがまとまらない、物忘れが増えるといった認知機能の低下を感じることがあります。また、ズキズキする片頭痛や、頭全体が締め付けられるような緊張型頭痛も、ストレスや悲しみによって引き起こされる代表的な症状です。

 

⑶         夜になると眠れない・途中で目が覚める不眠症状

布団に入ってもなかなか寝付けない(入眠困難)、夜中に何度も目が覚めてしまう(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまい、その後眠れない(早朝覚醒)といった不眠症状も、ペットロスによる精神的な負担が原因で起こりやすいです。

 

 

 

4.ペットロスの症状まとめ

ペットロスは、心の痛みだけでなく、倦怠感、微熱、胃腸の不調、動悸、めまい、頭痛、不眠など、様々な身体症状を引き起こす可能性があります。これらの症状は、大切な存在を失ったことによる深い悲しみやストレス、そして感情の抑圧が、自律神経系やホルモンバランスに影響を与えることで現れると考えられます。

 

もし、ペットとの別れの後に原因不明の体調不良が続いている場合は、「気のせい」「ただの疲れ」と片付けずに、ペットロスによる心身の反応である可能性を考えてみてください。

 

悲しむことは決して悪いことではありません。ご自身の心と体の声に正直に向き合い、必要であれば、我々のような専門家(精神科医・心療内科医)やカウンセラーに相談することも考えてみてください。一人で抱え込まず、適切なサポートを得ながら、ゆっくりと時間をかけて回復していくことが大切です。