心療内科・精神科とよだクリニック

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認知症と暴力について

認知症は、脳の機能が低下することで、記憶力や判断力、そして感情のコントロールが難しくなる病気です。症状が進行すると、感情の起伏が激しくなり、しばしば暴力的な行動に出ることがあります。

これは家族や介護者にとって非常にストレスフルであり、患者様自身も攻撃的な行動によってさらなる孤立や不安を引き起こす可能性があります。認知症による暴力行為の背景にはさまざまな要因が複雑に絡み合っています。本記事では、認知症による暴力行為の主な原因と、効果的な対処方法について解説します。

1.認知症患者が暴力行為に至る主な原因

・認知機能の低下

認知症は脳の様々な部位に影響を及ぼし、記憶力や理解力、判断力が大きく損なわれることがあります。これにより、患者様は日常の出来事を正確に把握できなくなり、しばしば混乱や不安を感じます。例えば、家族や介護者が善意で行った行動が誤解され、攻撃的な反応を引き起こすことがあるのです。また、記憶障害により過去の出来事を正確に覚えておらず、それに対する苛立ちが暴力に繋がることもあります。

・情緒の混乱

認知症患者様は、しばしば幻覚や妄想を体験します。例えば、誰かに追われていると感じたり、身近な人に何かを盗まれたと誤解したりすることがあります。このような情緒の混乱は、患者様にとって非常に恐怖を伴うものであり、その結果、周囲の人々に対して攻撃的な行動を取ることがあります。特に、疑念や不安が極度に高まると、患者様は自分を守ろうとする本能から暴力を振るうことがあります。

・生理的な要因

認知症患者様の身体的な健康状態も、暴力行為に影響を与えることがあります。痛みや不快感、あるいは未治療の感染症がある場合、患者様はそれを自分で適切に表現することができないため、苛立ちや怒りを感じ、結果として暴力的な行動を取ることにつながります。例えば、長時間同じ姿勢でいることによる体の痛みや、消化不良による腹痛など、日常生活における些細な不快感が大きな攻撃性に繋がることがあるのです。

・環境要因

環境も認知症患者様の攻撃性に大きく影響します。騒音や人混みなど、過度の刺激は患者様にストレスを与え、その結果、暴力行為が引き起こされるのです。また、介護者が忙しく、患者様の感情や身体的ニーズに適切に対応できない場合、患者様は不安を感じ、それが攻撃的な行動に結びつくこともあります。さらに、介護者のストレスや疲労が患者様に伝わり、双方にとって悪循環を生むことも少なくありません。

2. 認知症患者の暴力行為に対する効果的な介入方法

・ 環境調整

認知症患者様の生活環境を適切に調整することは、暴力行為を減少させるために非常に重要です。患者様が安心して過ごせる環境を整えることで、攻撃性を抑えることができます。具体的には、騒音を減らし、過度の刺激を避けることが効果的です。また、患者様がリラックスできる空間を作り出すことが、彼らの心を落ち着け、攻撃性を減少させる助けとなります。

・行動管理

暴力行為が発生した場合、行動管理が非常に有効です。具体的には、患者様に対して明確で簡潔な指示を与え、優しく対応することで、彼らの不安を和らげることができます。また、患者様の個人的な空間を尊重し、無理な接触を避けることが、攻撃的な行動を防ぐ手助けとなります。患者様に対する言動や行動が、彼らの感情に直接影響を与えるため、介護者の冷静な態度が患者様の攻撃性を抑えるカギとなります。

・薬物療法

幻覚や妄想が原因で暴力行為が発生している場合、薬物療法も必要となります。抗精神病薬や抗不安薬を使用することで、情緒や行動の問題をコントロールすることができます。ただし、これらの薬剤には副作用が伴うため、医師の指導の下で慎重に使用する必要があります。薬物療法はあくまで一時的な手段であり、環境調整や行動管理と併用することが重要です。

・専門的なサポート

認知症患者様の暴力行為が深刻である場合、精神科医や専門医のサポートが必要です。特に、重篤な精神行動症状が見られる場合、老年精神科病棟での入院治療が考慮されます。患者様の状態に応じた詳細な検査と治療が行われる専門的なケアが重要です。

3.認知症患者への支援と家族・介護者のサポート

認知症患者様の暴力行為は、家族や介護者にとって大きな負担となります。そのため、家族や介護者も適切なサポートを受けることが重要です。

カウンセリングや介護者向けのサポートグループへの参加、介護者自身が「介護うつ」にならないような工夫が必要です。

また、地域の福祉サービスや医療機関との連携を深め、必要なサポートを受けることが、家族や介護者の負担を軽減するための重要なステップです。

認知症患者様の暴力行為は、認知機能の低下や情緒の混乱、生理的な問題、そして環境要因など、さまざまな要因が絡み合って発生します。

暴力行為が見られた場合は、専門医に早期に相談し、適切な対応を行うことが重要です。専門的なサポートと早期の介入が、患者様とその家族の生活の質を向上させるためのカギとなります。