心療内科・精神科とよだクリニック

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認知症 原因で一番多いアルツハイマー病とは

「最近、物忘れが多くて…」そんな不安を感じていませんか。認知症は、誰にとっても身近な問題となりつつあります。様々な原因がある中で、最も多いのがアルツハイマー病。今回は、このアルツハイマー病について、その原因から症状、そして向き合い方まで、医師の視点から分かりやすく解説します。正しい知識を持つことで不安を和らげ、精神科受診を含めた適切な対応への第一歩となるでしょう。

1.そもそもアルツハイマー病とは何か

認知症を引き起こす病気はいくつか存在します。その中で、アルツハイマー病は全体の半数以上を占める、最も代表的なもの。脳の神経細胞が徐々に壊れていくことで、脳の機能が低下していく進行性の病気です。特に記憶を司る海馬という部分から萎縮が始まることが多いのが特徴です。

 

なぜ神経細胞が壊れるのでしょうか。現在の研究では、脳内に「アミロイドβ」という異常なたんぱく質が蓄積することが、発症の引き金になると考えられています。このアミロイドβが溜まると、神経細胞の働きが悪くなり、やがて細胞自体が死んでしまうのです。

 

さらに、「タウタンパク質」という別のたんぱく質も異常に蓄積。これも神経細胞の死滅に関与し、脳の萎縮を加速させます。これらの変化は、症状が現れる10年以上前から、静かに脳の中で始まっていることも。ゆっくりと、しかし確実に進行していくのが、アルツハイマー病の怖い側面と言えるでしょう。決して他人事ではない、その現実をまず知ってください。

 

2.脳の変化と現れる症状の段階

アルツハイマー病の進行は、脳の変化と密接に関連しています。初期段階では、主に記憶に関わる海馬の機能低下が顕著になります。新しい出来事を覚えられない、いわゆる「物忘れ」が目立ち始めます。単なる加齢による物忘れとの違いは、体験したこと自体を忘れてしまう点。例えば、「朝食に何を食べたか」ではなく、「朝食を食べたこと自体」を忘れるのが特徴的です。

 

中期に進むと、脳の萎縮は側頭葉や頭頂葉へと広がります。これにより、時間や場所が分からなくなる「見当識障害」が出現します。慣れた道で迷ったり、今日の日付が分からなくなったりするのです。また、言葉がスムーズに出てこない、物の名前が思い出せないといった言語の障害や、計画を立てて実行することが難しくなる「実行機能障害」も見られます。

 

さらに症状が進行すると、前頭葉など脳全体の機能が低下。人格の変化や、徘徊、物盗られ妄想といった行動・心理症状が現れることも。最終的には、日常生活全般に介助が必要な状態に至ります。症状の現れ方や進行速度には個人差が大きいものの、こうした段階的な変化を知っておくことは、早期発見と適切なサポートに繋がる重要な知識です。

 

3.アルツハイマー病の診断と治療

アルツハイマー病が疑われる場合、どのような検査が行われるのでしょうか。まずは、ご本人やご家族から詳しくお話を伺う問診が重要。いつから、どのような症状があるのか、日常生活での変化などを確認します。次に、記憶力や見当識などを評価する神経心理学的検査を実施。これにより、認知機能の低下の程度を客観的に評価します。

 

さらに、脳の萎縮の程度を確認するためのMRIやCTといった画像検査も行われます。最近では、脳内のアミロイドβの蓄積を画像で確認できるアミロイドPET検査や、脳脊髄液中のアミロイドβやタウタンパク質を測定する検査なども、診断の精度を高めるために用いられるようになりました。

これらの検査結果を総合的に判断し、アルツハイマー病の診断に至ります。

 

現在のところ、アルツハイマー病を根本的に治す治療法は確立されていません。しかし、進行を緩やかにする薬(抗認知症薬)は存在します。これらの薬は、神経伝達物質の働きを調整することで、中核症状の進行を抑制する効果が期待されるのです。また、薬物療法だけでなく、リハビリテーションや生活環境の調整といった非薬物療法も重要です。

これらを組み合わせることで、ご本人のQOL(生活の質)を維持し、穏やかに過ごせる時間を長くすることを目指します。早期発見・早期治療が、より良い経過のためには不可欠です。

 

4.予防と共生のためにできること

アルツハイマー病は、現時点では完治が難しい病気です。しかし、発症リスクを低減するための予防策や、発症した場合でもより良く生きていくための方法はあります。予防には、生活習慣の改善が有効と考えられています。具体的には、バランスの取れた食事(特に魚や野菜、果物)、適度な運動習慣、質の高い睡眠が挙げられます。

 

加えて、知的活動や社会的な交流も脳の健康維持に繋がる大切な要素です。趣味を楽しんだり、人と会話したりすることは、脳に適度な刺激を与え、活性化させる効果が期待できるのです。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の管理も、アルツハイマー病のリスク低減に関係します。

 

もし、ご自身やご家族がアルツハイマー病と診断されたとしても、決して一人で抱え込まないでください。医療機関はもちろん、地域包括支援センターや家族会など、相談できる場所はたくさんあります。病気を正しく理解し、利用できるサポートを上手に活用すること。それが、ご本人にとっても、支えるご家族にとっても、穏やかな日々を送るための鍵となるはずです。未来への希望を失わず、共に歩む道を探していきましょう。